100日間、酒をやめる。-38日目-
酒飲みならではの能力がある。
"酒飲みセンサー"である。
近所を散歩していても、
「ここはひとりで入ってしっぽり飲めそうだな」
「この場所でビール飲んだら最高だな」
「ここは仲間に入れてもらえそうだな」
おしゃれなカフェや美味しそうなご飯はスルー。
ポケモンGOでいうところの、
"ポケストップ"ならぬ、
"飲みストップ"に立ち止まることができる。
一般的には一見入りづらそうでも
「ここなら行ける」と
酒飲みセンサーは反応する。
近ごろは飲みセンサーを停止させてしまったので、景色が違って見えて来た。
本当に飲み以外の店が視界に入っていなかったことに気がついた。
視点をすこし変えると、
飲みセンサーは人に対しても反応することができる。
この人は酒が好きで楽しめるタイプだ、
この人は酒の誘いなら乗ってくれる、
酒があれば分かり合えてしまう人だ。
酒飲みはお互いをセンサーで察知して肯定し合うことができる。
「俺たちバカでしょうもないけど、飲みは最高だよなー」
この辺は喫煙所のコミュニケーションに近いのかもしれない。(吸わないから知らない)
飲みセンサーは飲みを通して万人に与えられる能力で、あらゆる人種や、性別や、社会的地位や、職業や、趣味や、属性の垣根を越えて同じ価値観を分かち合う事ができる。
この複雑で面倒なことが多い世の中で
"飲みの場は楽しい"
いつでもどこでもただひとつの終着点で
"ザッツオール!!!"である。
現状は、センサーをオフにしている。
(正確にはオンになってもスルーしている)
果たして、センサーは本当に必要な能力なのか。
酒飲み以外の世の中はあまりにも多様で複雑で絡み合っている。
短絡的な結論にすがりたい気持ちをグッと堪える。
〈負けた悔しさは 震えるほどだけど
握り拳をほどいて ズボンで汗拭き 握手しよう!〉
そんな時いつも
ポケモン主題歌「ライバル」の
サトシの声と姿を思い出す。