あなたが英語を話せない理由②「文法力不足で話せない」は本当?
文法力不足を嘆く方がいる一方で、「文法がわからなくても単語を使えればなんとかなる」という声を耳にすることがよくあります。確かにそれにも一理あります。なぜなら、英単語は、話す内容に関連している「内容語」と、文章にするうえで文法上必要とされる「機能語」に大きく分けることができ(表1参照)、「内容語」を羅列すれば、「機能語」が不十分でも、伝えたい内容を聞き手は推測することが可能だからです。
上記の英文中、太字が「内容語」でそれ以外が「機能語」です。「機能語」を消すとこうなります。
どうでしょうか?誰が言ったのか定かではないが、だれかが昨日動物園に行ったことはわかります。聞き手は前後の文脈から、あなたが言ったと推測することができます。このように内容語の羅列だけでもなんとか意味が通じることが多々あります。
しかし、これで事足りると思っている方はこれを読んでいないはずです。
あなたは知っている単語をとりあえず羅列するカタコト英語を卒業し、きちんとした文で流暢に英語を話したいと思っているはずです。それには文法力は必須です。
今日は、話せるようになる為にまず最初に学習するべき最優先文法事項と学習方法についてお話しします。
英会話に必要な文法力はどの程度?
英会話に必要な文法力はどの程度なのでしょうか? 結論から申しあげますと、日常英会話であれば「中学英文法」で十分です。私達が中学校で何を習ってきたかといいますと、年代によって若干違いが有りますが、おおよそ以下の項目を習ってきています。
5文型
Be動詞
一般動詞
助動詞
名詞
冠詞
副詞
形容詞
代名詞
時制(現在・過去・未来・進行形)
否定文
疑問文(付加疑問文・間接疑問文)
命令文
受動態
比較
関係代名詞
現在完了形
分詞
かなりの文法項目を習ってきていますね。ではこの中学英文法の中でもっとも大事なのは何でしょうか?
最初に使えるようになるべき文法事項は何?
中学英文法の中でも「英語を話す」のに最も大事なのは、「5文型」です。
なぜなら文構造の「屋台骨」だからです。以下は5文型と例文です。忘れてしまっている方は思い出してください。
話すのが苦手な方の特徴の一つとして、S(主語)の後にO(目的語)やC(補語)または修飾語をもってきてしまうというのがあります。例えば;
となるはずが、
となってしまいます。つまり、「日本語の順番で英語を発話」しています。
英語は言いたいことの「優先順位が高い事項ほど前」に来ます。だれが、どうした、何を、誰と、いつ、という順番です。S+Vの順番はほぼ変わりません。日本語では主語を省略することも多く、「どうした」にあたる動詞が述語として最後に来るので、私達日本人はこのS+Vで始まることに慣れていません。 この5文型の順番で英語が口からでるようになれば、文構造の骨組みはできているので、時制、関係代名詞、比較、仮定法等、皆さんの多くが苦手とするその他の文法が多少間違っていても、伝えたいことのおおよそは伝えられます。
5文型で発話する為のお勧めトレーニングと教材とは?
スピーキングで5文型を確実に運用できるようになる為の勧めの訓練は、「瞬間英作文」です。短い文を文型ごとに瞬時に英語で発話していくトレーニングです。どのぐらい短い文かというと、先ほど例にあげた「昨日は動物園に行ったんだ」というような1行程度の日本語で、読んで瞬時に意味がイメージできる長さです。この短い日本語を瞬間的に英語で発話できるようになるトレーニングで英語を話す「土台」を作りましょう。
お勧めのテキストはこちらです。
それにしても、中学英文法だけでも結構ありますね。しかも「現在完了形」、「付加疑問文」といった四文字熟語のような日本語表題がさらに苦手意識を後押ししているような気がします。現在完了形とか付加疑問文といった日本語表題は覚えなくても大丈夫。忘れてもあなたが英語を話す上でなんら問題はありません。英語母語の5歳児は、”Present perfect tense(現在完了形)”とか”relative(関係詞)"などという言葉を知らずに話しています。あなたが英語を流暢に話すようになる時には、これは現在完了形でとか関係詞でなどといちいち考えて話していないでしょう。
完璧な文章を目指して難しい単語や文法を駆使し時間をかけて発話することよりも、自分の知っている簡単な単語で5文型の文章が作れ、それらが口から瞬時に出てくることの方が大事です。相手があなたの言葉を待っているのですから。
中学英文法の効率的な復習方法とお勧め教材は?
このブログは、中学英語の「知識」はあるが、それをリスニングやスピーキングに「運用」できない方を対象としています。とはいえ、何年も前に学んだ英文法、忘れてしまっていても仕方ありません。中学英文法に少し不安のある方は、簡単なテキストを一冊仕上げて短時間で総復習してしまいましょう。受験用に書かれたような詳細なものではなく、できるだけ簡単で、実用的、直観でわかるようなテキストを使用してください。後ろの方にまとめテストが付いているものがベストです。
よくテキストの一章目から順番に読んで問題を解く人がいますが、多くのテキストの一章目はbe動詞か5文型です。皆さんはbe動詞よりも現在完了形や比較級のほうが苦手なはずです。既にできていることにわざわざ貴重な時間を割く必要はありません。最も苦手な部分から攻めるが鉄則です。
中学校英文法を8割程思い出したら一旦英文法テキストは横に置いて次に進みましょう。今ここで英文法に完璧を求める必要はありません。勉強をするなかで疑問に思ったらまたテキストを開けば良いのです。あなたの目的は英文法のエキスパートになることではなく、英語を使ってコミュニケーションができるようになることなのですから。
お勧めのテキストをご紹介しておきます。
私が高校生のころ、英語の勉強を長らくさぼっていた為に、副詞と形容詞の区別すらつかず、「そもそも、副詞って何?」と国語辞書を開いて品詞を理解していたことがあります(苦笑)。のちにアメリカ留学の為にTOEFLの勉強で英語で書かれたテキストを使ったのですが、英語での説明のほうが理解しやすく、しっくりきた覚えがあります。すでに英文法をある程度理解している人は、むしろ英語で書かれたテキストを使用する方が理解しやすいかもしれません。英語で英文法を勉強したいという挑戦者の為のテキストお勧めはこちら。
英文法が苦手で英語が話せないと思っているあなた。日常会話で必要なのは中学英文法です。中学英文法を週末にもう一度復習してください。短い5文型の英語がスラスラと口からでてくる訓練をしてください。これであなたの英語を話すための「土台」はほぼ出来上がります。