5/10 出費の優先順位を考えて
これは僕にも言えた話ではある。
だが、仕事で相手をする滞納者というのはその比ではない。
所持金0円を自負する滞納者がいた。平然と言ってのける精神からしておかしいと思ったが、電気や水道含む公共サービスが軒並み停止している辺り場当たり的な嘘を言っている訳ではないということだ。
その滞納者がようやく動いて生活保護を受けることが出来たようだ。
そうなると資金状況が変わるので訪問したのだが、扉を開けた瞬間に飛び込んできたのは咽せ返るような臭気だった。
不意を突かれてそれの正体にはすぐに気付けなかったが、どうやらそれが煙草によるものだ掴めたのはそれから数分後だった。
玄関先には以前には無かった酒瓶や空き缶が転がっている。これだけで状況が変わっているということが容易に理解出来た。
だが、肝心の支払いについてはすぐには出来ない。
翌月まで待ってくれと宣った。
「酒や煙草を買う金があるのに支払いが出来ない?」
この家に住めなくしてやろうか?と言おうと思ったが、それはギリギリのところで飲み込んだ。
この滞納者に限らず、支払いが滞る人間というのはお金の使い方において優先順位がおかしい。
バグっていると言って差し支えない。
借りたものを返す、そんな当然の義務を果たすことよりも嗜好品に走るという己の欲望を満たすことを優先してしまう。僕にはそれが愚かであるとしか捉えることが出来ず、到底理解はし難いものとなる。