すわ、テレビの故障か、電波ジャックかと・・・
テレビ制作の世界では「朝の視聴習慣はなかなか変えられない」というのが常識だ。私も何十年もNHKばかりを見てきた。
けさも日課のストレッチなどをやりながら6時過ぎにNHKにチャンネルを合わせたら、元所属タレントがジャニーズ事務所の性虐待を告発している。「あれ、NHKにしなくちゃ」と思って「1」のボタンを押すが、ウンともスンとも言わない。
とっさに「うちのテレビチャンネルの設定がズレて、民放が映っちゃっているのかな」と思った。しかし他のチャンネルを押してみると特に不具合はないし、冷静に考えればそもそも民放が「ジャニーズ疑惑告発」を放送するわけがない。
次に考えたのは、何者かによるNHK電波ジャックテロの可能性だ。
自宅レコーダーの24時間録画を再生してみたら、NHKは直前まで通常の放送をやっている。そして、その時間は衆議院議員千葉5区補欠選挙の政見放送だと気がついたのだ。
これが総選挙ならNHKには連日政見放送が溢れかえるわけだが、補選ではそれもなく、意識していなかった。そういえばきのうもやっていたぞ。
それにしてもこの政見放送、ナレーション、音効(音楽)、サイドスーパーがもろにワイドショーの“文法”を踏襲していて、まったく違和感がない。同じスタッフが「あえていつも以上にいつも通り制作」したのは明らかだ。しかも延々と続くのである。あとでチェックしてみたら、30分の放送枠に3政党が登場していたので、およそ10分間ほどが割り当てられていたもよう。
この政党はどうも「政治とマスコミの癒着」を告発したかったらしい。その主張の是非はここでは書かない。「とにかく話題になればいい」のか、この手法はなんとも大胆。ある意味でこれも電波ジャックだ。
かつてのある“事件”を思い出す。
「雑民党」を掲げたゲイの東郷健という候補が政見放送でいわゆる「放送禁止ワード」を連発し、NHKが音声を削除したことで裁判になったものだ。ネット検索してみると、一審で損害賠償を命じられたNHK側だが、控訴審・最高裁では勝訴していたようだ。
今回のNHK内部の議論はどうだったのだろう。当該放送を全編チェックしていたわけではないが、具体的なNGワードがあったわけでもないようなので、とても「削除」はできずこの放送になったのだろう。OAされていたこの10分間の渋谷局内の雰囲気はすごかっただろうな。
あまりの異常事態に「ネットもさぞバズっているんだろうな」とキーワードランキングをチェックしたが、かなり下に「政見放送」というワードがひとつ見つかるだけ。ネット民にはほぼスルーされていたのである。
みんな、びっくりしなかったのかな?というよりも、ネットをバズらせる層とこの時間にテレビを視聴している層がくっきり乖離しているのだな。
(23/4/20)