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SNS選挙と大メディアの敗北

 パワハラ不信任案可決で前職が失職したことによる兵庫県知事選挙は、蓋を開けてみればその斉藤前知事が再選された。得票数は111万票以上、初当選した前回よりも25万票も上積みして、開票直後に各社が一斉に当確を伝えるという「8時当確」の圧勝である。投票率は55.65%と、前回よりも14.55ポイントも高くなったという。

 「SNSなどで支持が広がって追い上げている」という報道は見ていたが、ほとんど関心がないままだったので、「あれだけ総バッシングされたあのパワハラ知事がまた当選するとは」と意外な気分である。

 なにが起きたのか。

 一番大きいのは、SNSによる支持の広がりらしい。「実は斎藤さんは守旧派にいじめられただけで政策はすばらしい」という“言説”が燎原の火のように広がって、それがばっちりと投票行動につながった、らしい。その心理の裏には大手メディアへの不信感があるという。「SNSにある情報を信じて行動する」というのは、つまり既存のメディアを信じられないのだろう。

 まさにそのオールドメディアに40年近く奉職してきた身としては、「おいおい、ファクトチェックもままならないあっちの世界を鵜呑みにしてええんかい」「それって、陰謀論が広がったアメリカと同じ道だよね」と思う。

 そして。

 都知事選の石丸現象といい、衆院選の国民新党の躍進と既存政党(自民・公明・維新・共産)の苦戦といい、このオールドメディアへの不信といい、これはいまの日本に広がる停滞感やイライラが形を変えながら噴出しているのだろう。

 現状を守る「保守」を否定するのはいい。しかしその方向性を誰も示すことができていない、そんな気がする。

 さて、失職して県庁を去る際には花束贈呈などのセレモニーがなかった斎藤知事。きょう?あす?の初登庁を職員たちはどんな表情で出迎えるのだろう。そこも気になる。
(24/11/18)

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