Podcastを早送りで聴くと
「コストパフォーマンス」ならぬ「タイムパフォーマンス=タイパ」という言葉を耳にするようになったのは最近のことだ。意識するようになったのは光文社新書「映画を早送りで観る人たち」が評判になったあたり。刊行されたのが2022年春だからまだ2年である。
あいにく本書は未読のままだが「時間をかけるのが惜しいから映画や映像作品を早送りをする人がいる」という現象の背景を分析しているらしい。関連業界にいた者として当然ながらそんなスタイルには違和感しかない。
しかし、考えてみると自分も同じようなことをやっていることに気がついた。Podcast視聴である。
Podcastなるコンテンツをしっかり聴くようになったのはジェーン・スーさんと堀井美香さんのおしゃべりが楽しい「OVER THE SUN」から。いまではこれ以外にも某アナウンサーの配信も毎週聴くようにしている(アナの名前はここでは明らかにしない)。
再生アプリには再生速度を調整する機能がある。そしていったん1.4倍速で聴き始めてしまってからは、もう1.0倍ではかったるく感じてしまうようになってしまった。
そういえば、今はやめてしまった音声朗読サービスAudibleも1.3倍速で聴くようになっていたな。
「ゆっくりではかったるい」という気分は、すなわち「タイパのために映画を早送りする人」と同じであり、批判している場合ではなかった。
影響は「読書スピード」に現れているような気がする。
本を読む際には2つのモードがあるように思う。
ひとつは「文字だけを追って読み進むモード」。エンタメ小説などでストーリーに没頭するもので、「ゾーンに入っている」と表現してもいいのかもしれない。
もうひとつが「脳内再生モード」。口でブツブツと読み上げることまではやらないが、文章を脳内で再生しないとアタマに入ってこない状態だ。そしてPodcastを1.4倍再生で聴く習慣ができてからは、この文章再生までが自然にその速度になっているようなのだ。これは難解なコンテンツを理解しようとしたり、文章自体を味わう読書においてはいささか速すぎるために、なかなかストレスフルなことなのである。
仕事ではない。趣味の読書でも“タイパ”を無意識に追求している現代人のなんとせわしないことか(←「チコちゃんに叱られる」の森田アナ風に)。
いや、違うのかもしれない。
もう60歳、本を楽しめる残り時間はどんどん減っているのだから、少しでもタイパを上げるのは正しいことなのだ。
さて、日曜日。きょうもたっぷり読書三昧である。
(24/3/24)
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