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ブータン旅行記 #4 迷いながら買った「お土産」

※1998年に特派員としてブータンを訪れた際に家族や友人にメールで送った記録です。20年以上が経った現在のブータンはかなり変容しており、細かい事情も変わっていることにご留意ください。(文章は基本的に当時のままです)

仏画「タンカ」の魅力

いつも私は出張や旅行でお土産はあまり買いません。どんなものでも今やあまり珍しくもないこと、かさばること、配るのが面倒なこと、などのためで、最近では気が向くと息子にTシャツを買うぐらい(暑いバンコクで息子はTシャツばかり着ることになるので、いくらあってもいいという判断)。しかし今回のブータン出張ではさすがに見るもの聞くものが珍しく、前述のコインのほか、親子3人お揃いのブータンTシャツ(ブータンのシンボルである雷龍の周りを十二支の動物が取り囲んでいるといういかにも幼児が喜びそうなデザイン)、そして「タンカ」=ブータンの仏画を買いました。

タンカとは布のような素材にブータン仏教のテーマを描いたもので、いろいろなデザインがある。すべて手描きなため、けっこう高い。「うーむ、Uさんが言うように、こういうものはブータンで見るからいいのであって、バンコクや東京に持ち帰ると持て余すのかなぁ」と思っていたわけです。ところがこのタンカのうち、あちこちで見かけるいいデザインがある。鬼が車輪を抱えていて、この車輪は「天道・畜生・餓鬼・地獄」など六道輪廻を示した細かい図柄。ひとつひとつが漫画チックで、しかも全体としての調和が素晴らしい。宿泊したホテルのロビー(というかフロント付近のソファがあるところ)にもこれがあり、いつも「いいなぁ」と眺めていたわけです。で、いろいろな店でもついこれを探していたのですが、ある日政府公認の土産物屋でも数枚を発見。やっぱり上手いものと下手なものがあり、値段もすこしずつ違う。そのうちに自分なりの「鑑定ポイント」もできてきて、左上の如来像の表情と輪廻の地獄で首を切られている罪人の表情が満足できるものがいい、ということになってきた。そこで考える。「もしかするともう二度とブータンには来ないかもしれない。ここでこれを買わないと、バンコクや東京でものすごく後悔するかもしれない」となってきて、とにかく店員さんに「もし持ち帰るとすると、どうするのか?なにか筒のようなものに入れてくれるのか?」と聞いたわけです。すると敵もサルもの「マネージャーに聞く」。すぐに偉そうな人が出てきて「どれですか?これ?あ、筒に入れます」と、もうテキパキ作業開始。こちらとしては「買う」と言った覚えもないのですが、なにしろそもそも迷っていたところ、「まぁいいか」ということになった次第。ちなみにお値段は8000ニュルタム。日本円にするとざっと2万7000円というところでしょうか(98年当時)。高いと言えばバカ高いが、手描き・ブータン・気に入ったデザインとなるとそうでもない、不思議な買い物でした。ちなみに同じ大きさでも2000ニュルタムというものもある。「なんでこんなに値段が違うのか」と聞くと「まず、デザインが細かいものは描くのに時間がかかる。それにこれは仏教上意義深いものだから」とのこと。確かに、安いものは例えば菩薩が真中にデーン!とあるだけとか、いかにも描くのが簡単そう。私が買ったもの以外にもさらに大きくさらに高い「お釈迦さまの一生」を描いたものがあったのですが、これは1万7000ニュルタム、5万7000円。流石にこれは買いませんでした。

#5最終回へ続く


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