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女性の苦労を認識していなかった

 昭和末期から30年以上もテレビの報道部門に在籍していたので、なんとなく「自分には社会常識や雑学が備わっている」という自負がある。実際、テレビのクイズ番組を見ていてもよっぽどマニアックに振り切った番組でない限り9割は正答できる。
 
 それなのに「あれ、そうだったのか、知らなかったよ!」となった出来事があった。
 
 大阪市で「元夫が離婚した妻を刺殺した」というニュースの原稿で、逮捕された容疑者と被害者の姓(名字)が同一だったのだ。「離婚したのだから、これはおかしいだろ。気づかないとはボンヤリした記者だな」と思い込んだのだ。
 
 ところが。
 
 自宅の新聞でこの記事に反応していたカミさんに「その記事、離婚したのに2人の名字が同じなの、変だよね」と話したところ、「いや、離婚しても同じ名字を名乗り続けるのはあるのよ。子どもの名前を変えるのがかわいそうだから、じゃないの?」というではないか。知らなかった。
 
 ネットによると名字を変更しない方は4割もいるという。変更しないことのメリットとデメリットを解説してくれる親切なサイトもあった。
 



 そういえばフルタイムで働いている職場の既婚女性は「銀行やパスポートの変更はあまり苦にならなかったけど、美容室や飲食店を戸籍名で予約したのか、通称(旧姓)なのかがわからなくなるので、いちいち2つを名乗ることになる」とボヤいていた。
 
 うーむ、当然のようにカミさんが名字を変更してくれた我が家。アイデンティティたる氏名の変更を余儀なくされる女性の気持ちはまったく想像の中になかった。いまどきこれは恥ずかしいことである。
 
 「選択的夫婦別姓制度」はいまも日本政治の論点のひとつ。こうした女性たちの悩みは十分考えなければならないが、「家族の一体感が失われる」とする保守層の論理も理解できる。そもそもこの制度の推進を唱える方も、いざ自分が結婚する際に離婚することまで考えることはないだろう。そう、これは男女の権利のありようが問われる問題であり、私個人としても簡単に決めつけられるものでもない。
 
 自民党総裁選挙では選択的夫婦別姓制度に前向きだった石破氏。報道によると首相就任後の代表質問では一転して慎重姿勢になったそうだ。そもそも少数与党でヘロヘロヨレヨレな姿ばかり目立って、こうした個別の問題に向き合えるようには見えないが、さて、どうなさるつもりなのだろうか。
(24/11/13)

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