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捨ても無くしも出来ないのは私だった

 泥棒猫です。

 前回の続き。


 彼に決定打となる別れを、私に2度と会いたくなくなる方法で、告げるには。

 ジャジャーーーン(効果音が古い)

婚姻届を差し出して結婚を迫るのよ!


 既婚者には一番堪えるでしょう。ドン引くでしょう。しっかり記入して判子も捺して、なんだったら友人2名に署名ももらおうかな。

 そして満面の笑みで、こう言うの。

「ありがとう。私のことを思ってくれて。分かったよ、あなたの不安を取り除いてあげる方法。結婚したらいいんだよね、そうゆうことだよね。ごめんね。分かってなくて。そりゃ、言い出せないよね。貴方からは。はい、これを預かってね。貴方が準備できたら一緒に届けに行こう。本当は離婚届ももらってきておいてあげようかと思ったんだけどね。さすがにそれはあなたと奥さんの問題だから、差し出がましいことはやめておこうと思ってね。それは自分で取りに行ってね。」

 って、虚な目で、でも満面の笑みで、ずーっと喋り続けるの。平坦な口調で。立て板に水のような勢いで。

 どうですか?怖いでしょう😊



 それで私は市役所に行き、婚姻届をもらって来ましたよ。日曜日だったけどちゃんとくれるのね。知らなかったよ。


 そして眼鏡をかけ(シニアグラスのいるお年頃)、丁寧に丁寧に魂を込めるように記入した。何かに取り憑かれたみたいに。


 だから画像は実物です。


 そうして記入し終えて、あまりに集中したからなのか、全力疾走したみたいな疲労感がやって来た。つ、疲れた・・・


 婚姻届を眺めながら、これを渡せば全部終わるなーって漠然と考えていた。


 あれ?頬に温かい何かが。

 私、泣いてる?

 涙を流してる。なんで?どしたの?


 泣いてることを自覚したら、そこからワンワンと泣き出して。号泣。本当に号泣した。


 私は彼を失うことが出来ない。

 彼が既婚者のくせに私のことを、捨ても無くしも出来ないんだろうなって思ってた。

 でも違ってた。

 それは私の方だったんだ。


 つづく。

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