見出し画像

私が酒を飲まないわけ

 月日がたつのは早い。私が最後にアルコールを摂取してからまもなく6年になる。2018年の大みそかに会社の保養所で飲んだビールが最後だったわけだが、その頃には日常的にほとんど飲まなくなっていたために、ひどく酔いが回ってしまった。「ああ、もう本当に飲まないでいいや」と決心できたのである

 けさの朝日新聞別刷り「Be」は読者アンケートで「あなたはお酒を飲みますか?」という記事を掲載していた。70%が「はい」としているのはほぼ予想通り。

 面白かったのはその理由である。複数回答で、多い順に「そもそも飲めない体質」「おいしいと思わない」「飲まない方が健康」「酔っ払いになりたくない」「お金がもったいない」「しらふの時間が大事」「おいしいノンアルが増えた」「飲まない方がよく眠れる」「飲むと太る」だった。

 うーん、この選択肢は編集部側で用意したものだろうが、なかなかいいセンをついている。

 私の場合は「仏教徒として不飲酒戒を守る」「血糖値が高い」という2点が大きく、酒席でも「宗教上の理由です(笑)」と冗談めかして答えれば、もうそれ以上突っ込まれることもなかった。しかし「酔っ払いになりたくない」「お金がもったいない」「しらふの時間が大事」あたりにも激しく賛同する。

 仏教の「不飲酒戒」が目指すところも「気が乱れることをいましめる」という教えであり、よく考えてみれば「酔っ払いになりたくない」「しらふの時間が大事」はそれと同じ意味だ。

 かつては「どうして飲まないの?」と聞かれたもの。しかし6年も経てば親しい友人や同僚はいまさら聞いてもこないし、初対面の方がそこに興味を持つ時代でもなくなっている。それでも次に尋ねられたら「宗教上の理由です。つまり、しらふの時間が大事なんです」としてやろう。

 他方、その場では「酔っ払いになりたくないんです」と口にすることはないだろう。なぜなら、そこには「私は酔っ払いとは醜悪なものだと認識しており、目の前にいるあなたが酔っぱらうのもミットモナイと思っているのです」という含意があり、さすがにそれをぶちまけちゃうことを避けるだけの嗜みはあるのだ。
(24/12/7)

いいなと思ったら応援しよう!