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第5回 私の戦略を導き出したフレームワーク(クロスSWOT分析)

前回紹介した4つの項目「強み」「弱み」「機会」「脅威」はうまく書き出せたでしょうか?
補足になりますが上記4つの項目は、自分が設定する市場における競合との比較で構いません。この市場の設定も大きなポイントですので設定を変えながら分析するのも良いと思います。
ちなみに私が設定した市場は佐賀県や九州北部です。カメラマンとしてある程度自由に行動できる範囲で考えました。競合は写真館やウエディングカメラマンと仮定しました。
またターゲット設定も重要です。ターゲット(お客様)が変われば当然4つの項目の中身も変わってきます。私の場合はウエディングや家族写真の依頼をしてくれる可能性のあるエンドユーザーと設定していました。
繰り返しになりますが、上記のことを踏まえ、市場やお客様から見た客観的な自分の強みと弱みを出すことが重要です。

さてここからが今回の本題です。私はこのSWOT分析をもとにある「作業」を行うことで、カメラマンという『仕事』をどう成長させていくべきかの具体的な戦略を練ることができました。その作業は「クロスSWOT分析」といわれます。
方法は以下の通り。
まずSWOT分析を行って出てきた内部環境の「強み」「弱み」と外部環境の「機会」「脅威」をそれぞれ掛け合わせていきます。つまり
「強み」×「機会」
「弱み」×「機会」
「強み」×「脅威」
「弱み」×「脅威」
ということです。そしてこれを踏まえ状況の分析と戦略の検討をしていくのですが、それぞれが何を意味しているかというと、
「強み」×「機会」 → 自分の強みをチャンスに活かします。
自分の基本的な方向性になることが多いです。ここがしっかりハマれば大きな収穫を得ることができるので、戦略の軸にしてみると良いと思います。
「弱み」×「機会」 → チャンスはあるが、何か自分に足りないものがあって結果を出しにくい分野。
つまり現状不備がありチャンスを活かせない状況や、競合の方が優位で先を越される可能性がある部分です。弱みを解消できればチャンスになりますが、すぐに解消できないようであればここに力を注ぐべきではないかもしれません。
「強み」×「脅威」 → 自分の強みはあるが競合の存在や自分にとって不都合な流れがあり、戦略的に不透明な状況です。
戦略を進めていく上で状況の変化に注視する必要があります。その脅威が自分の強みを無効化しそうであれば柔軟に対応する準備が常に必要です。(個人的にはここに出てくる事柄は好きで、人と違うやり方で新しい価値を作ることができれば面白いことができると思います)
「弱み」×「脅威」 → 自分の弱みの部分にさらに新しい技術や競合が台頭してしまうような分野です。ここを基本戦略としても成果が上がりにくい上、弱みを放っておくと大きな打撃を受けてしまう可能性があるので要注意です。例えばAIやロボットの登場で無くなってしまう職業などをネット記事として見たことがありますが、まさにそのようなことです。

簡単に説明をしてきましたが、実際分析を行う際は以下の画像のような表にしていきます。

ここでは4年前に自分自身がどのような掛け合わせで分析と対策などの戦略を練ったのかを再現してみました。(表はネット上に無料でありますので探してみてください)
まず「強み」×「機会」から導き出された軸となる戦略はというと、
①経験&情報×閉塞感
ユーザーの心が既存写真館から離れてきているため、自分の経験技術と情報を活かし新しい選択肢を市場に提供すれば利用したいお客様はいるのではないか。
②コミュ能力×SNS
文章は苦手だが発信自体は嫌いではないので、(当時)普及し始めているSNSで広告費をあまりかけずに知ってもらうことが可能ではないか。
③技術&肩書き×著名人なし/経験×少子化対策
写真に特化した人気のフリーペーパーでカメラマンとして活動もしていたので、佐賀でウエディングフォトグラファーといえば「自分」になれるようなブランディングを行うことで認知してもらうことが可能ではないか。
4年前に考えた戦略ですが、全て忠実に行動を起こしある程度目標を達成できていると思っています。ちなみに番号はふってませんが、経験×少子化対策についても行動しています。具体的には我々のような小さな写真館が誰にも頼まれてもいないのに、昨年勝手に少子化対策と銘打って「家族の写真展」というものを佐賀県庁で行いました。(ハレノヒHPのブログを探してみてくださいね)なかなか行政の理解も効果も出ていませんが、私は今でも今後このような流れになると思っています。

次に「弱み」×「機会」です。
④スタジオがない×閉塞感
せっかく既存写真館に閉塞感があるのにもかかわらず、スタジオがない現状では優位性をもてない。
⑤衣装店×閉塞感
撮影需要における多くのお客様の入り口にもなっている衣装サービスとのつながりがないと、既に衣装店とのつながりがある既存写真館との競争力は低下してしまう。(結局2017年に自社で衣装店を立ち上げました)
⑥出身地×閉塞感&SNS
地方都市ではやはりよそ者に対して警戒感を持ちがち。せっかくSNSが普及をしてきていてもその部分をどう解消するのかが課題。(この問題に対しては発想を変え、よそ者の強みが発揮される状況に持って行きました。それについてはまた今度紹介したいと思います。)

そして「強み」×「脅威」はというと、
⑦経験技術×技術革新
技術と経験を更に積み上げて技術革新の脅威にさらされないようにする必要あり。⑧経験技術×価値の低下
同じく技術と経験を更に積み上げて価値をつけていく必要あり。
この⑦と⑧についてもまたこのブログの続きで書きますが、ざっくり言うととにかく勉強です。また技術革新に伴うデジタルカメラの普及を逆手にとって、うまくカメラを使いたいというニーズの高まりに自分の技術を教えてしまうことで価値を高めようという作戦も考えました。それが今も行っている写真教室開催につながっています。私は基本的に大きな流れは逆らうものではなく柔軟に対応するスタンスです。

最後に「弱み」と「脅威」について。
⑨スタジオがない×技術革新
は後ほど。
⑩衣装店×価値の低下
写真館の撮影の価値が下がってきている上、デジタルカメラの普及によって扱いやすくなったため衣装店が写真撮影を行い始めるという状況。これが定着してしまうと差別化できていないカメラマンや写真館は仕事の多くを奪われていくことになります。(予想通り増えてきましたね)
以上、①から⑩までの掛け合わせた項目を説明していきましたが、当時の自分が着目したのは④と⑨の「スタジオがない」という弱みの部分です。いつもロケーション撮影ではいくら技術があったとしても気温や天候の問題を解消することはできず、撮影機会を失う可能性が高いのではないか。また誰でもデジタルカメラで写真が撮れるようになった現代では、自然光下でのありきたりな撮影では他者とのはっきりとした違いを示すことも困難であり、商品撮影などの広告写真でもストロボ撮影が可能なスタジオが必要である。と考えました。(もちろんスタジオがなくても個性を出しているカメラマンさんはたくさんいます。あくまで当時の自分が考えた弱みです。)
兎にも角にも、創業セミナーに参加した自分はこのような経緯で「スタジオを持とう!」という方針を導き出すことになったのです。
ちなみに⑤と⑩に出てくる衣装店とのつながりの課題については、営業に回り提携先を見つけました。しかし提携というかたちでは十分なサービスができないのと、⑩の脅威を完全に払拭することはできないと考え、現在自社で衣装店を行う計画(※)を進めています。(※執筆時)

次回は「スタジオを持とう!」と考えた自分が起こした行動と、運命的なタイミングのストーリーについてご紹介したいと思います。

(あとがき)
今回の内容はいかがだったでしょうか?書きながら思ったのは、やはりこのSWOT分析が当時の自分のするべき行動や戦略をはっきりと示し、それを今日に至るまで徹底的に行うことで現在の成果につながっているのだということです。私のようなタイプには合っているのかもしれませんね。
またこの分析で面白いのは市場やターゲットが変われば自分の強みや弱みは変わってくること。時には真逆になったりもします。市場とターゲットを変えることによって弱みを強みに変える作業は個人的に大好きです。
最後にしつこく書きますが、あくまで私は素人なのでSWOT分析を含めマーケティングのフレームワークをちゃんと運用したい場合は専門家に相談してくださいね。

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笠原徹|地方でクリエイティブな仕事をする|ハレノヒ
株式会社ハレノヒ代表取締役/2015年、築100年の古民家をリノベーションした写真館をオープン。地方写真館の再定義を行うことによって人とまちが豊かになる仕組みをつくろうとしています。その他セミナー講師や各種メディアにも出ています。