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「無作為抽出」と「無作為割付」
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全部を味見するヒトはいませんよね
無作為抽出
母集団全てを調べ上げるのではなく、結果に一定の影響を及ぼそうとする意図を排除し、母集団から選ばれた標準的で偏りが生じることが無いように(ランダムに)少数の標本(サンプル)を選び出して、この少数の標本を調べることで全体の性質や特性を推定しようとする統計学的な標本調査の手法の一つが無作為抽出です。
ちなみに「無作為に抽出する」という動詞にあてはまる英語はランダマイズ(ramdomize)、「無作為抽出」という行為は英語ではランダムサンプリングです。
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味見してみて甘いようなら、この籠の中のミカンは
甘そうだと結論付けることができる…
これが統計学です
母集団から標本を「無作為に抽出する」ことができれば、その標本が母集団全体を代表する確率が高まり、統計学的に得られる結論に大きな信頼性を持たせることができます。
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全部甘いと結論付けるのはいけません
この無作為抽出という考え方は、治験においては被験者を異なるふたつのグループ、介入群と対照群、に振り分ける際に無作為割付として用いられています。
ふたつのグループである介入群と対照群につきましては、別の記事【「介入群」と「対照群」】の解説を閲覧してみてください。
無作為抽出から無作為割付へ
治験においては、無作為割付という手法を用いることによって、被験者を異なるふたつのグループ、介入群と対照群、に偏りなく振り分けることが可能となります。
この手法によって振り分けられた介入群と対照群であるからこそ、それぞれの被験者グループは異なる治療を受けることになるのですが、ふたつのグループの偏りを気にすることなく治験結果を評価解析することができるのです。
無作為割付は多くの治験で治験デザインの一部として採用され、治験結果の信頼性を向上させる役割を果たしています。
無作為割付で問題を解決
無作為割付はヒトの手作業でできるようなものではなく、クラウド上のソフトウェアサービスなどが利用されることが多く、被験者や研究者がこの作業に介入できないように工夫され、厳正に行われています。
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コンピュータが割り付けをしています
「研究者や被験者が介入できないようにする」という考え方は非常に大切で、治験では無作為割付と同時に、ブラインドと呼ばれる盲検という手法も組み合わせて実施されることが多いです。
介入群と対照群、どちらのグループに属しているのか、の情報を被験者にも研究者にも知らせないという手法が盲検です。
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適切な判断が妨げられてはいけません
無作為割付と盲検で、被験者にとっては、介入群と対照群、どちらのグループに属しているのか、わからないので、治験参加中の診療で研究者への報告が先入観の入らない報告になりますし、一方、研究者にとっても、被験者が介入群と対照群、どちらのグループに属しているのか、わからないので、治療効果の評価がより客観的になります。
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命に係わることですから
被験者、研究者、もしくはその他の者が、治験結果に一定の影響を与えることを目的として、特定の属性の被験者をどちらかのグループに、恣意的に割り付けようとする不正操作などの倫理的問題も無作為割付が解決します。
これらの問題を克服することによって、治験それ自体の信頼性の向上に役立っていることから、無作為割付というひと手間は治験参加を検討されている皆様には、介入群と対照群、どちらのグループに属しているのか、はっきりしないこともあって不評かもしれませんが、不可欠のひと手間です。