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治験負担軽減費:被験者さんのご苦労をねぎらうために支払われる金銭です

治験はアルバイトとして誤解されがちですが、そうではありません。

アルバイト?

アルバイトとは「一定の雇用契約のもとに労働力を提供する行為」のことですよね。したがって、アルバイト料は「提供された労働力の対価として支払われる金銭全般」と定義できます。
 治験では被験者と雇用契約を結ぶわけではありませんし、労働力を提供してもらうわけでもありません。


ですから、アルバイトではありませんし、お支払いする金銭もアルバイト料ではなく負担軽減費と呼びます。

労働力!

治験では被験者の皆様に労働力の提供をお願いすることはありません。
とはいえ、目に見えるご負担ご苦労、目に見えないご負担ご苦労、をお願いすることにはなります。それらのご負担ご苦労に対する補償という位置付けが負担軽減費です。

繰り返しになりますが、治験参加を目的として医療機関を受診していただく際には、被験者の皆様にいろいろなご負担ご苦労をお願いすることになります。

さてさて・・・  日程調整か・・・ 

まず、治験のための受診日は数日間のアロワンスと呼ばれる猶予期間が認められているものの、この猶予期間を超えて大きく逸脱することは許されていません。このように厳格に受診日が決められていることが常ですので、万障繰り合わせてこのスケジュールに合わせていただくためには一定のご負担ご苦労も発生するはずです。

ふだん乗らない電車・・・  間に合うかな・・・

次に、治験が実施される医療機関までの交通費も発生するでしょうし、タクシーを使うかもしれませんし、いつもより朝は早く家を出なくてはいけなくなるかもしれません。

もうこんな時間・・・

最後に。治験受診日には採血して血液を検査する検体検査なども多くの治験で予定されています。食事に影響を受ける検査項目もありますので、検査の精度を確保するためには、受診当日の朝食を抜いてもらうこともあるでしょう。そのような場合には外食などの余計な出費も発生してしまうかもしれません。

昼食は外食・・・

これらのご負担ご苦労をねぎらうためには、金銭的な補償という形が、参加者にとってはもっとも受け入れやすいということで、通常、一定の金銭が参加者に、一回の受診ごとに、支払われています。
この記事でご案内している第三相試験では、一回の受診ごとに、数千円から一万円というのが相場です。
第三相試験は長期試験ですから、例えば一年間続く試験で毎月受診が発生する場合は、この額に12を掛けた額が負担軽減費の総額となります。


付け加えて、ひとこと

さらに、負担軽減費が支払われる以外でも、被験者の皆様が治験に参加している期間中、治験に関係する病気に限っては、内服薬の費用や検体検査の費用は発生しないということも利点となるはずです。
「治験に関係する病気に限っては」という条件があることを付け加えて説明しておきます。
例えば、高血圧症の被験者さんが血圧を下げる薬の治験に参加した場合、血圧を下げる薬は治験薬として被験者に提供されますので、金銭的な負担はありませんし、血圧に関係する検体検査も治験の中で実施されますので、無料です。
しかしながら、同時に慢性胃炎という病気を同時にお持ちであったり、治験期間中に風邪をひいてしまったりしますと、胃腸薬や風邪薬などは保険診療となりますので、自己負担額が発生します。
また、同じように血圧に関係しない内容を検査した検体検査も保険診療となりますので、自己負担額が発生します。


もう、ひとこと

治験に批判的な記事を眼にすることもあるのですが、日本では法律上、治験が実施されないと、医薬品を販売することはできません。
被験者さん、治験ボランティアさん、治験コーディネータさんも含めて医療側のスタッフさん、製薬業界の担当者さん、いろいろな方々とH.A.Lab.Inc.はお付き合いがありますが、批判的な記事を書いているヒト、読んでいるヒト、に向けて発信したいのは「皆さん、病気したら、おくすり飲んでますよね」ということです。

年末年始も公共交通機関は止まりません、誰が電車を運転しているのでしょうか?携帯でポチるだけで商品は届きますが、誰がロジスティックを支えているのでしょうか?・・・例を挙げたらキリがありません。

批判的な記事を書いているヒト、読んでいるヒト、であっても、皆さんの飲んでいる、もしくは、今は元気でも将来飲むかもしれないおくすり作りに、先述のボランティア・各職種の方々が縁の下の何某 なんとやらになって、協力していることに想いを巡らせて欲しいです。


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