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スウェーデンの生活文化とマインドフルネス

"Fika"と"Lagom" の心地よさ

私がスウェーデンで暮らすようになって結構経ちますが、住みはじめて間もなく気づいたことは、この国の人々が日常の中で「心地よさ」と「穏やかさ」をとても大切にしているということ。

それを象徴する二つの言葉が "Fika(フィーカ)と "Lagom(ラーゴム)"

これらは単なる習慣や考え方ではなく、毎日を丁寧に生きるための知恵そのものだと感じられます。
まるでマインドフルネスの実践のように、スウェーデン人の暮らしには「今、この瞬間」に意識を向け、自然体で過ごす工夫が散りばめられてるよう。

"Fika"で生まれる豊かな時間

スウェーデンでは "Fika" という文化が日常に深く根づいています。
直訳すると「コーヒーブレイク」になるのですが、Fikaはそれ以上に特別な意味を持っています。
それは、日々の忙しさを少し脇に置き、同僚や大切な人と一緒に、または自分一人でゆったりと過ごす時間。

職場によっては、Fikaの準備が当番制になっていて、持ち回りで、その日にお手製の甘いものを作って持っていったり、お店で買って準備します。

我が家のFikaは、スウェーデン人の夫が週末に作るシナモンロールや、今の時期に欠かせないサフランパンとともに楽しむのが定番。
どの家庭にもあるキッチンの大きなオーブンで一度に大量に焼き上げ、焼き立てをいただきます。残りは冷めたら冷凍保存。
その後、食べたい時には自然解凍するだけで、しっとりした食感が戻ってきて充分美味しくいただけます。

シナモンの甘くスパイシーな香りや、サフランとレーズンのふわっと華やかな風味。
どちらもお店で買うものとは一味違う、手作りならではの優しい味わいが広がります。
そしてそれに合わせるのは、スウェーデン人が愛してやまない濃いコーヒーです。

実は、スウェーデンは世界有数のコーヒー消費国で、一人当たりの年間コーヒー消費量は驚くほど。
朝の目覚めの一杯、午前の仕事中のFika、そして午後のリフレッシュのための一杯……日常のあちこちで、コーヒーが欠かせない存在として飲まれています。

スウェーデンのコーヒーは日本のものよりもはるかに濃厚で、はじめてスウェーデンでコーヒーを飲むときには驚くかもしれません。
でも、シナモンロールや甘いお菓子と一緒に飲むと、この濃さが驚くほどしっくりくるのです。


Fikaの時間がもたらすもの

Fikaは、何も大げさなことではありません。
おうちでお気に入りのカップにコーヒーや紅茶を注ぎ、お菓子を用意するだけ。
大切なのは、ただ飲んだり食べたりするのではなく、その時間を「味わう」ことです。

例えば、コーヒーを手に取ると、その香りが立ち上がり、カップからゆっく
りと湯気が上がります。こうして、コーヒーを片手に甘いお菓子を楽しむ時間は、日々の忙しさからふっと解放される瞬間でもあります。

コーヒーの香り、シナモンやサフランの優しい風味、目の前にある穏やかな時間――これらをゆっくりと味わうことが、Fikaの真髄。
その香りを楽しみながら一口飲めば、濃厚な風味が口いっぱいに広がり、温かいシナモンロールをひとくちほおばると、シナモンと砂糖の甘さが心までふっと溶かしてくれるよう。

この時間にスマホやテレビを見るのではなく、窓から外を眺めながら、小鳥が枝を飛び回る姿を追ってみたり、ただ自分の心の中に静けさが広がるのを感じたりします。
そんな時間が、日常の中にふっとした穏やかさと豊かさをもたらしてくれます。


"Lagom"「ちょうどいい」を見つける暮らし方

Fikaと並んで、スウェーデンで大切にされているのが「Lagom(ラーゴム)」という言葉。
「多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい」という意味合いで、物事のバランスを見つけることを意味しています。

例えば、スウェーデンの働き方にはこの Lagom が根づいているように感じます。長時間働くよりも、限られた時間の中で効率よく仕事をこなし、その後は自分や家族のための時間を大切にする。
無理をしすぎず、自分にとっての「ちょうどいい」バランスを保ちながら過ごすことで、心にも余裕が生まれます。

また、Lagom は暮らしの中にも息づいています。
家の中に物をたくさん置かず、本当に必要なものだけを大切に使うシンプルな暮らし方が好まれます。
例えば、お気に入りのカップや器を大事に使い続けたり、飾るものも厳選し、空間に余白を残すことを意識したりします。
この「ちょうどいい暮らし方」が、自然と心にも穏やかな余白を生み出してくれます。


FikaとLagomが教えてくれるマインドフルネス

Fika と Lagom には、マインドフルネスと共通する「今、この瞬間を大切にする」という価値観が流れているように感じられます。
日々の生活に少し取り入れるだけで、心に穏やかな時間をもたらしてくれます。

・おうちFikaの時間を作る
忙しい日常の中で、たとえ5分でもコーヒーやお茶を楽しむ時間を作ってみませんか?
自分で淹れた一杯とお気に入りのお菓子を丁寧に味わうだけで、心がふっと軽くなります。Fika は、何も特別なことではなく、日常の中にちょっとした「贅沢」を見つける時間です。

・自分にとっての「ちょうどいい」を見つける
仕事や暮らしの中で、無理に頑張りすぎず、「自分にとってちょうどいいバランス」を意識してみませんか?
物を減らしてシンプルに暮らすことや、自然の中で過ごす時間も、Lagom の考え方の一つです。

・自然の中でリセットする
スウェーデンの人々は自然と共に生きることを大切にしています。
お散歩に出て、風の音や鳥の声、木々の揺れを感じる時間は、心をリセットする最高の方法。
猫のように気の向くまま歩いてみるのも楽しいかもしれません。

日常に「小さな贅沢」と「バランス」を取り入れる

スウェーデンの Fikaと Lagom は、日々の生活を豊かにしてくれる大切な考え方。
忙しい毎日の中でも「今この瞬間」に意識を向け、ちょうどいいバランスを見つけ、無理せず穏やかに暮らすことで心は穏やかになってきます。

どちらも、日々の中に「小さな幸せ」と「心の余白」を生んでくれる大切な生活の知恵。

我が家の Fika 時間も、自家製のシナモンロールやサフランパン、そして濃いコーヒーとともにゆっくり流れています。
何気ないけれど、この瞬間が何よりの贅沢。

皆さんも、日々の生活にFikaとLagomを取り入れて、心をほっと緩める時間を楽しんでみるのはいかがでしょうか。

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