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【本屋めぐり】奈良の本があるところを、気合で行脚した。

奈良にはたくさん本屋がある。

どの町にも本屋はあるけれど、その密度にびっくりした。
大阪でも、こんなにぽんぽん出くわさない。
近畿で対抗できるのは、京都ぐらいじゃないかと思う。

慶河堂が配布しているフリーペーパー「ならまちきたまちブックマップ」によると、JR・近鉄の奈良駅から徒歩圏内に20店以上。
大和郡山のとほんなど沿線の店も含めれば、奈良に住めば当分読む本には困らないと思う。……本の置き場には困るけれど。

ブックマップは「慶河堂」「ほんの入り口」など一部の参加店で入手可能

前回は時間が遅かったこともあり、今日こそはまわれるだけまわってやる! と気合で行脚した。
閉店日でめぐりあえなかった店も多いけれど、同じように本屋めぐりをしたい人向けに今回訪れた場所・訪れたかった場所(未達成)を残しておこうと思う。

近鉄線以北「きたまち」エリア

ほんの入り口

トップバッターはほんの入り口。JR・近鉄奈良各駅から閑静な石畳の道をゆくと現れる、新刊を扱う書店だ。

本の、ではなく「ほんの」入り口、店主・服部さんの人柄が表れる。
定期的にイベントをひらいており、講師役は私たちと同じ一般市民。肩肘はらず参加できる、ゆるさがウリ。

置いてある本は一応人文系が多いけれど、ガンガンに主張するよりはそっと寄り添う本が多め。思想が前面にでたお店が苦手な方でも、ここなら「あーわかる」と共感できる本に出会えるかも。

ベニヤ書店

残念ながら休業日。Webで確認するかぎり、新書の棚が厚くてそそられる。
昔からある本屋は、スタンダードな品揃えが魅力。また今度行きます。

実験する本屋 ヌリタシ

厳密には訪れたのは前回だけど、こちらも紹介。
「社会人として働きながら週末だけ本屋をすることは可能か?」という、大変面白い試みをされている。
お店は小規模ながら、すぐそばには中古絵本屋のゆりゆりBooksもあるので、Instagramで開店日をチェックして訪れてほしい。

大学堂古書店/桂雲堂豊住書店

両方休業日……と思いきや、桂雲堂のほうは先代店主が亡くなられ、惜しまれつつ閉店したとのこと。仕方ないとはいえ寂しい。
現在、先代の息子さんが在庫整理のためイベント出店をしているようなので、タイミングがあえば足を運んでみたい。

大学堂古書店は休業日。また今度。

近鉄以南「ならまち」エリア

啓林堂書店 奈良店/書院

啓林堂は奈良県内の書店チェーン。奈良店は近鉄奈良駅のすぐそばに。
よくある書店よりも棚が高く、みっちり詰まっているように思う。
新書の棚も厚く、ほかにはヤングアダルト向けの若干マイナーな本や地元・奈良の書籍も。2階部分はブックカフェになっていて、本を買えば割引がきくとのこと。

智林堂書店

駅から南下、商店街「もちいどのセンター街」にある古書店。
洋書はドイツ語・フランス語などもカバー。海外観光客が時折吸い込まれるように入っていく。海外文学や明石書店の世界各国「○○を知るための」シリーズ、旅行記なども多め。

帰宅してから、店主さんの書いているブログを見つける。旅行好きだとのことで、品揃えに納得。

古本屋 えっちゃん堂

ブックマップ未掲載ながら、別の古本屋さんに教えてもらって足を運ぶ。
なんと元タオル屋さんという異例のキャリア。
小規模なお店ながら雑貨もあり、絵本や漫画も。
入店時に靴を脱ぐのと、入り口の階段が急なのでそこだけご注意。

ちなみに、近くにはいかり文庫があるのですが、祝日の臨時営業を見落として寄りそびれました。惜しいことをした。

古書バル ぽらん

本屋かどうかは不明ですが、通りがかりに気になった場所。
どうも、作家さんが開いたバーのようで……?
さすがに昼間は開いておらず、後ろ髪ひかれながら後にしました。

無人書店ふうせんかずら

最近増えているシェア型書店のなかでも、スマートロックで無人販売を実現した先駆的な「ふうせんかずら」。
なんと、今回はシステムの不具合で入店用の新規IDが発行できず、仮IDもダメでした(2025年2月24日現在の情報)。
やっぱり人の手がときには必要……。ただ、この仕組みのおかげで販売手数料を限界まで抑えているようなので、応援したい。

BO/OK

アート・デザイン系の書店。デザイナーであるオーナーさんが日・月限定で、デザイン事務所を開放されているようです。
デザイナーさんの間でちょっと前に話題になっていた本から、海外のインテリアリメイク本、本の装丁の本など、アート心をくすぐる本多め。

慶河堂&itoito

ならまちの東に徒歩しばらく、「ならまち工房」にあるお店。
1階が慶河堂、2階が本屋 itoito。残念ながらどちらも休業日でしたが、ご親切にもブックマップを外に置いてくださってました。
慶河堂はラテンアメリカ系の本もあるらしく、すごく行きたかった……!

itoitoは絵本や児童書なども多いようですが、この店含めた奈良のいくつかの本屋は、2023年に閉店したcojica booksに関わってた方たちがあちこちで開いたもののだそうです。

古本白利

元興寺近くの観光スポット、奈良町にぎわいの家の隣にある古本屋。
なんとGoogleマップにも載っていない。土日祝に開けてらっしゃるそう。

小さいお店ながら、柳田國男の全集や世界の文学、親しみやすい本まで個性あるラインナップ。
店主は親切な方で、ブックマップに載っていない本屋も含め、どの店がどんなところかを丁寧に教えてくださいました。地域や本への愛着が伝わってきて、近くに寄ったら挨拶に行きたくなる、そんな古書店。

古書 柘榴ノ國

本来は月・火定休ですが、SNSでたまたま開店してると聞き急行。
入って奥の棚は海外の古典がびっちり、私には夢の国……。
そして手前側には、若干サブカル系の本もあって「古書店ってこうでなきゃ」と心のなかでニヤリ。建物の1階にはレコードや洋楽CDなどを扱う別の店があるので、音楽好きの方はあわせてどうぞ。

奈良市立中央図書館

最後に触れておきたいのが、やっぱり図書館。
開放的な館内の吹き抜け階段をウキウキのぼっていたのですが、なんと蔵書整理で4階部分が閉館中。もしかして、ツイてない……?
3階の児童書コーナーだけ見てまわったのですが、洋書コーナーにスペイン語の本もあり、意外なところまでカバーしてました。

歩いて感じた、奈良の魅力

これだけ急ピッチでめぐったのに、まだたどり着けてない本屋が何軒もあるから恐れ入る。

古都の本屋は、格式高く思える古典や歴史を庶民にやさしく届けてくれる。
色あせた昔の岩波文庫や絶版になった本を、小学生のお小遣いで買える値段で置いてくれることも。

京都が学生を鍛える町だとすれば、奈良は庶民にも文学を開け放つ町。
どんな人が暮らし、訪れ、買ったり買わなかったりするかで、本屋の棚も、店主の向き合い方も、微妙にちがってくる……ように思う。

おおらかで、フラットで、それでいて専門性もあって。
次はどんな本を読もうかと、気楽に悩める。

移住するなら、奈良の近くがいいな……なんて思うのでした。

今回お迎えした本

沙を噛め、肺魚|鯨井あめ|講談社

啓林堂書店にて

世界幻想名作集|澁澤 龍彦 編|河出書房新社
本は読めないものだから心配するな|管啓次郎|ちくま文庫
本屋で待つ|佐藤 友則・島田 潤一郎 著|夏葉社

古書 柘榴ノ國にて

体験格差|今井 悠介 著|講談社現代新書
能力で人を分けなくなる日|最首 悟 著|創元社

ほんの入り口にて

まんがで読破 椿姫|イースト・プレス

古本屋 えっちゃん堂にて

自殺って言えなかった。|サンマーク出版

智林堂書店にて

九つの銅貨|W・デ・ラ・メア 作/脇 明子 訳|福音館文庫

古本白利にて

How to Book in Japan|NEUTRAL COLORS

BO/OKにて

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