英雄譚へのアンチテーゼ
現代性を帯びた古典的SF作品宗教が狂信へと変わり、政治が新たな軋轢を生み出す。
人類史で繰り返されてきたそれらを圧倒的なスケールで描き、「神話」の構築を試みる一方で「神話」そのものにも批評的な本作は、神秘的で普遍的で現代的だ。
原作に忠実でありつつも主人公ポールを英雄として描くのではなく、母ジェシカのプロパガンダに苦悩し葛藤する青年として、諦念と悟りに満ちた瞳へと移り変わってしまう悲劇の主人公として描いたことで訓話としても機能する。
そして何より、チャニというヒロインを通じて