論点解析経済法(第2版)Q8 解答例
こんばんは。土日の休日ももう終わりに差し掛かっていますね。休日というものは早いものです…。明日からのお仕事も頑張りましょう!
さて、本日は、前回に引き続き、『論点解析経済法(第2版)』のQ8の解答例です。今回ももちろん、教授による添削済みです。この問題も、司法試験の選択科目を経済法で受験する方は、チャレンジしてみた方が良い問題だと思います。ぜひ、取り組んでみてください!
それでは、以下、解答例です。
第1 設問1
1 A社とB社との間で、OEM供給を行うことは、不当な取引制限(独占禁止法(以下、法名省略)2条6項)に該当し、3条後段に反し、違法とならないか検討する。
2 「事業者」(2条1項)とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいい、「他の事業者」(2条1項、同条6項)とは、実質的な競争関係を含む、相互に競争関係にある独立の事業者のことをいう。
本件において、A社及びB社は、建築資材である製品αを製造販売するメーカーであるから、それぞれ、「事業者」に該当する。そして、A社及びB社は、両社ともαを製造販売していることから、相互に競争関係にあるといえる。
したがって、A社及びB社は、それぞれ「事業者」(2条1項)に該当し、それぞれ他方の「他の事業者」(2条1項、同条6項)と上記OEM供給を行うことを計画している。
3 「共同して」とは、事業者間に意思の連絡があることをいう。そして、意思の連絡とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、明示の合意をすることまでは必要ではなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる。
本件において、A社とB社は、A社は関西以西の顧客に対する販売量に相当する製品αの供給をB社から受け、B社は関東以北の顧客に対する販売量に相当する数量の製品αの供給をA社から受けることを検討しているため、A社とB社との間に明示の合意に基づく意思の連絡がある。
したがって、A社及びB社は、「共同して」上記OEM供給を行うことを計画していると認められる。
4 「相互にその事業活動を拘束」するとは、複数の事業者が、意思の連絡・合意により、本来自由であるべき事業活動が制約されていることをいう。
本件において、A社とB社は、上記OEM供給を行うことにより、供給先がA社はB社、B社はA社というように、本来自由であるべき事業活動が相互に事実上制約されることとなる。
したがって、A社とB社は、「相互にその事業活動を拘束」しており、相互OEM供給は共同して「遂行」されていると認められる。
5 「一定の取引分野」とは、市場、すなわち、特定の商品・役務の取引をめぐり供給者間・需要者間で競争が行われる場であり、商品・役務の範囲、地理的範囲等に関して、基本的には、①需要者にとっての代替性という観点から判断される。また、必要に応じて、②供給者にとっての代替性という観点も考慮される。
(1)本件において、製品αは、一定の規格に基づいて製造される同質的な商品であり、αの代替製品が存在しない。そのため、商品の範囲としては、製品αであると画定できる。
(2)また、製品αの輸入は困難であり、製品αの需要家は全国の大手建設業者であり、日本各地から製品αの調達を行っている。そのため、地理的範囲としては、日本国内であると画定できる。
(3)したがって、本件における「一定の取引分野」は、日本国内における製品αの製造販売分野であると画定する。
6 「競争を実質的に制限」するとは、特定の事業者又は事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすことができるという意味での市場支配力を形成、維持又は強化することをいう。
本件において、A社とB社は、合計で90%のシェアを有する。そして、上記OEM供給により、A社については同社による製品αの総販売数量の約30%にあたり、B社については同社による製品αの総販売数量の約40%にあたる。製品αの販売コストのうち製造コストが約8割を占めることからすると、上記OEM供給を行うことにより、費用の共通化が図られることとなる。そのため、A社とB社と間で、製品αの販売は従来どおり独自に行い、互いの販売価格や取引先等の決定には一切関与しないこととしているとはいっても、価格についての競争が行われにくくなると考えられる。また、前記の通り、A社とB社の合計シェアは約90%となることから、C社及びD社との格差は大きく、他の競争者からの圧力は小さい。製品αの輸入は困難であることから輸入圧力も小さく、製品αの需要が低迷していることから参入圧力も小さい。
したがって、上記OEM供給は、「競争を実質的に制限」すると認められる。
7 「公共の利益に反」するとは、独占禁止法の保護法益である自由競争経済秩序の維持に反することをいう。
本件において、A社及びB社による上記OEM供給は、上記6の通り、「競争を実質的に制限」すると認められることから、自由競争経済秩序の維持に反しているといえ、例外的に公共の利益に反していないとする特段の事情も認められない。
したがって、A社及びB社による上記OEM供給は、「公共の利益に反」すると認められる。
8 以上より、A社とB社との間でOEM供給を行うことは、不当な取引制限(2条6項)に該当し、3条後段に反し、違法となる。
第2 設問2
1 A社とC社との間でOEM供給を行うことは、不当な取引制限(2条6項)に該当し、3条後段に反し、違法とならないか検討する。
2 A社とC社は、「事業者」(2条1項、同条6項)であり、A社とC社は競争関係にあるといえるため、それぞれの「他の事業者」(2条6項)との間で、上記OEM供給を行うものであると認められる。
3 上記OEM供給は、A社は九州の顧客に対する販売量に相当する数量のうち半分にあたる量の製品αの供給をC社から受け、C社は関東以北の顧客に対する販売量に相当する数量の製品αの供給をA社から受けるという内容のOEM供給を行おうとしているため、A社とC社との間には明示の合意に基づく意思連絡があるといえ、「共同して」行うものであると認められる。
4 A社とC社は、上記OEM供給を行うことにより、供給先がA社はC社、C社はA社というように、本来自由であるべき事業活動が相互に事実上制約されることとなるため、「相互にその事業活動を拘束」しており、相互OEM供給を共同して「遂行」していると認められる。
5 「一定の取引分野」とは、市場のことを意味するところ、上記第1の5と同様に、本件で問題となる「一定の取引分野」は、日本国内における製品αの製造販売分野であると画定する。
6 「競争を実質的に制限」するとは、上記第1の6の通り、市場支配力を形成、維持又は強化することをいう。
本件において、A社とC社は、合計で55%のシェアを有する。そして、OEM供給を受ける数量は、A社については同社の販売総数量の約5%、C社については同社の販売総数量の約10%を占める。そうであるならば、たとえ製品αの販売コストのうち、製造コストが約8割と相当の部分を占めたとしても、価格が共通化する可能性は低いと考えられる。また、A社とC社は合計で55%のシェアを有するが、他の競争者であるB社が40%のシェアを有していることを踏まえると、他の競争者からの圧力は比較的大きいといえる。
したがって、A社とC社による上記OEM供給は、「競争を実質的に制限」するとまでは認められない。
7 以上より、A社とC社との間でOEM供給を行うことは、不当な取引制限(2条6項)に該当しないため、3条後段に反せず、違法とならない。
以上
以上が解答例となります。OEM供給に関しては、何回か司法試験で問われたこともあったと思います。いつ出てもおかしくないテーマだと思いますので、一度は解答してみてください。
それでは、今回はここまで!ここまで読んでいただき、ありがとうございました。