『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』
『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』
著者:鴻上尚史 佐藤直樹
出版社:講談社 (講談社現代新書)
発行年:2020年8月20日
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私は、鴻上尚史さんの『「空気」と「世間」』と『孤独と不安のレッスン』を読んで救われた人間の一人です。特に前者は、大学生のときに読んで、今まで抱えていたモヤモヤしたものの正体が垣間見えたような気がして、何だか心も軽くなったような覚えがあります。あれから10年くらい経ってしまいました……
そういう経緯があるので、書店で本書を見つけたとき、速攻でレジに持って行きました。〈新型コロナが炙り出した世間という名の「闇」に迫る〉という帯を見て、この数ヶ月ですごく溜まったモヤっとした気持ちが言語化できるはずという期待があったからです。
私は期待通りでした。鴻上尚史さんと佐藤直樹さんの対談形式で話が進むので、お二人の講演を聞いているようで楽しかったです。それに、ここ最近起こったこと(自粛警察や車の他県ナンバー攻撃など)に対するモヤモヤ感、息苦しさの正体が言語化されました。かなりスッキリしました。
序盤に出てきた、〈「社会」と「世間」の比較〉の図表(p.34)がうまくまとまっています。佐藤直樹さんの『「世間」の現象学』から抜粋された図ということで、その本も読んでみたいと思いました。お二人がそれぞれ「世間」の特徴について挙げていましたが、重なる部分もあって興味深かったです。その話の流れがあるので、佐藤直樹さんが、SNSのSは「Social」ではなく「Seken(世間)」であるという考えに深く納得してしまいました。「みんな同じ」。同調圧力。その一方、同調圧力の良い面にも少し触れているところはフェアだと思いました。
それと、終盤の〈不寛容の時代に窒息しないため〉で、生き方について提案があるのも良かったです。複数の弱い世間に所属する、ということです。これは、『「空気」と「世間」』にも通じていて、私もそれをできる限り実践してきました。転勤する前は4つくらいあったのですが、いまは会社だけになってしまいました。……あ、いま書いていて気づいたのですが、何となく最近気持ちがしんどい原因はここにもあったのかと驚きました。その気づきは、感想文を書いていなかったら分からなかったかもしれません。アウトプットって大事なんだなあ。その発見を含めて、本書を読んで良かったです。
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