
ひとり連句 義勇兵の死(自由連句)

〈表〉
十六夜や義勇兵死す言葉なし
このまま冬に入るウクライナ
さんざんなことばかりだね案山子くん
沖縄茶化しにゆく人もいて
ありがたき日常のあるおそろしさ
レンジがチンで「はい、茶碗蒸し」
〈裏〉
湯上がりの妻は剥きたてゆで卵
「けふは何の日?」知るよしもなく
ちょっと真似してムスタキの弾きがたり
「あの綺麗な大根脚はだれ?」
仁左衛門老いても恋の似合いをり
「とぼけ上手ね。テレビ切るべし」
家の戸を開けてまつ夜の磯は荒れ
越えじと告げた逢坂の関
いくじなしメール五文字のグッドバイ
貫乳寂し青磁の湯呑
妻のいぬ土曜のラジオ初しぐれ
いろいろあって宙ぶらりんの冬
今回のは式目破綻の18自由連句。秋から冬への季の移ろいに時事をからませてみました。
《1句》11月11日、ウクライナで義勇兵として戦っていた日本の青年が亡くなったという報が入りました。亡くなったのは9日。皆既月食の後の日、十六夜。なんとも言えない気分になりました。
《4句》もちろん、ひろゆきのこと。
《8句》たぶん、妻の誕生日。
《9句》シャンソン歌手、ジョルジュ・ムスタキ。弾き語り?フィックションです。
《10~15句》の不穏な雰囲気は、「I fall in love too easily」です。よかったら聞いてみてください。
《11句》15代片岡仁左衛門。文春に不倫疑惑でスクープされました。ランデブーの写真見ました?とても78才には思えませんでした。すごいなあ。すてきだなあ。脱帽の秋。
《16句》「貫乳」・・・陶磁器の釉薬(うわぐすり)の部分にできる細かいひび模様。
「 」はすべて我が妻の言葉の引用