ホスピタリティについて
私たちの仕事には、ホスピタリティが欠かせません。
ただ、この言葉について日本語で表現しようとしても、なかなかしっくりくる訳語が見つかりません。教科書通りに訳せば「おもてなし」や「思いやり」ということになるのでしょうが、どこか違うように感じます。
私が、近いニュアンスを感じるのが、近江商人に伝わる「三方良し」という言葉です。いわゆる「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」と、三者をすべて満足させるのが良い商売であるという教えです。
私たちは工芸品を作り、販売をしています。商品が売れれば、お金をいただけるわけですから、もちろん「売り手良し」にはなります。金沢箔が広まることで地域の伝統文化が元気になっていくことを思えば「世間良し」も言ってよいのではないかと思います。
ですから、最も大切にしたいと思っているのは、お客様の満足です。それを箔一では、お客様から「ありがとう」と言ってだけるような良い商品づくりであり、よい接客ととらえています。
お買い上げいただいているのに、お客様から感謝される。それは、ある意味不思議なことでもあります。あたりまえの結果ではないわけですから、あたりまえのやり方では無理でしょう。求められるのは、お客様の期待を超えること。感動を与えるサービスを提供することです。
これはマニュアルでは教えられません。一人ひとりが、真剣にお客様に向き合い、喜んでいただくことに全力を尽くしてこそ「三方良し」が実現できるのではないかと思います。