昨日は、ペルーで発見された約4000万年前のクジラの仲間の化石「ペルセトゥス・コロッサス」の研究成果が、8月2日のイギリス『ネイチャー』誌に掲載されました。と同時に、ニュースが世界を駆け巡りました。このペルセトゥス・コロッサスは、単に古い化石が見つかったというだけでなく、その体重が、最大340トンに達したと推定され、これまで確認された生物の中で最も重い可能性があるとされたからです。
国立科学博物館の特別展『海 生命のはじまり』を見てきたばかりということで、わたしもこの海の古生物について興味津々です。ということで、ChatGPTの力を借りながら、4000万年前からのメッセージを解読してみることにしました。
■地球史上最も“重い”動物「ペルセトゥス・コロッサス」
「ペルセトゥス・コロッサス(ペルーの巨大クジラ)」は、南米ペルー・イーカ県の砂漠地帯、サマカ地区の、約4000万年前(より正確には約3900万年前)の地層から発見されました。それは新生代・古第三紀・始新世の、ペルーの海岸に生息していた、バシロサウルス科の生物だったと考えられています。
発見された資料(MUSM 3248)=化石は、下図の濃いグレーで表示されている、巨大な13個の椎骨、4本の肋骨、それに骨盤の一部で構成されます。そのほか骨格の残りの部分(大部分)は、発見されていません。
参加した研究者の一人、Aldo Benites-PalominoのX(Twitter)アカウントを見ると、さらに分かりやすいイラストが添付されています。下図の赤の部分が発掘された骨です。右下の馬蹄型の骨が肋骨。一つの肋骨の中に、大人を一人囲めるくらいの大きさです。
発掘された化石から、ペルセトゥス・コロッサスの体長は17.0~20.1メートル、体重は85~340トンだと推定したそうです。これまで、恐竜を含めても生物最大と考えられていたシロナガスクジラ(最大確認体長は29.9メートルで、体重は199トン)を上回る、巨体だった可能性があることがわかったのです。
全長に対して体重が重いのは、発掘された1つの椎骨の重さだけでも150kgになり、それらから推定すると、全身の骨格だけでも重さが7トン以上になるからです。これはシロナガスクジラの2倍以上と推定されています。
なお椎骨は、ほかの脊椎動物と比べると、極端に厚く、錘や金床のようになっています。また脊椎動物では、骨の内部構造に外部の骨(骨膜)と内部のまたはスポンジ状の骨の2つの領域を認識できるのに対し、ペルセトゥス・コロッサスの骨には、スポンジ状の骨は存在せず、厚い骨だけが存在していることが明らかになりました。そのため、ペルセトゥス・コロッサスの骨格重量が7トンを超えると推定されました。
とにかく、クジラはもちろん他の動物と比べると、骨が異常に高密度で質量が規格外に重いのが、ペルセトゥス・コロッサスなのです。
前述の通り、見つかったのは椎骨13本、肋骨4本、骨盤部の一部だけで、頭蓋骨や歯なども見つかっていません。そのためペルセトゥス・コロッサスが、何を食べていたのかはわかりません。しかし骨の密度から、海岸の近くの浅い水域に生息する海洋動物であり、例えば甲殻類や軟体動物、魚類などの底生生物を食べていたと考えられます。また、草食であった可能性もありますが、その場合、それは唯一の草食クジラとなります。
いずれにしてもペルセトゥス・コロッサスが生きていた新生代・古第三紀・始新世は、地球が今よりも暖かい時代でした。海がペルセトゥス・コロッサスのような大きさの動物が進化するために、十分な資源(エサ)を提供できたことも、今回の分析で初めて明らかになりました。
■ペルセトゥス・コロッサスの基本データ
・発掘された骨:椎骨13本、肋骨4本、骨盤部の一部
・発掘年:2013年〜
・発掘者:初めて発掘したのがマリオ・ウルビナ(Mario Urbina)。その後のチームに参加したのがアルド・ベニテス=パロミノ(Aldo Benites-Palomino)等
・発掘場所:ペルー共和国イカ州 パラカス層のユマケ部層(オクカヘ砂漠)
・時代:新生代・古第三紀・始新世
・科目:バシロサウルス科
・推定体長:17.0~20.1メートル(55.8~65.9フィート)
・推定体重:85~340トン(84~335ロングトン;94~375ショートトン)
・収蔵博物館:リマの自然史博物館(サンマルコス国立大学)
下の写真が発見者のマリオ・ウルビナ(Mario Urbina)さん。
下が、発掘チームの中心的な人と思われる、凄腕の発掘者・アルド・ベニテス=パロミノ(Aldo Benites-Palomino)さん。
■ヤフコメの質問をChatGPTに尋ねたところ…その秀逸な回答に驚嘆
ChatGPTにペルセトゥス・コロッサスに関する海外のプレスリリースや記事を翻訳してもらいました。その後に、同じくペルセトゥス・コロッサスに関するヤフーニュースに寄せられたコメント(ヤフコメ)を、ChatGPTにコピー&ペーストしていきました。
それに対してのChatGPTの回答が分かりやすく、ペルセトゥス・コロッサスを理解しやすいと感じたため、ここに記載しておきます。
●約4000万年前って、どんな時代なの?
ペルセトゥス・コロッサスが生きていたのは、4000万年前……と言われてもね……。古生物に関して無知なわたしは、どれくらい前の話なのかさっぱり分かりません。
なるほど……隕石落下の後に、恐竜に変わって地球上を支配しはじめたのが哺乳類だったということ……さらに哺乳類の中でも後にクジラに進化していく動物群が、海へと生息域を広げていった。そのクジラなどへと進化していく過程の初期段階を示しているのが、ペルセトゥス・コロッサスだった(かもしれない)。だから、現在のクジラよりも、陸で生活していたころのなごり……四肢(手足)がチョコンと残っているわけですね。
●ペルセトゥス・コロッサスの大きさはどのくらい?
とても身近なお話です。たしかに全長20メートルと言われても、瞬時にどのくらいの大きさなのかイメージしづらいですよね。JRの在来線の1両の大きさとなると、一気にイメージが湧きます。
この在来線の1両の長さ……という他にもヤフコメには、お台場の「ユニコーンガンダムの大きさくらいだな」……という意見もありました。分かりやすいw というか、デカいな……って実感しやすいです。
ユニコーンモードだと19.7メートルなので少し低いですが、デストロイモードだと21.7メートル/23.7トン。ちなみに初代ガンダムのRX-72は18メートル/43.4t。
さらに国立科学博物館の外に展示されているシロナガスクジラの模型は、体長30メートルで体重が約150トンのメスの大人の個体を再現したもの。ペルーのペルセトゥス・コロッサスよりも大きいですね。なおシロナガスクジラの最大確認体長は29.9メートルで、体重は199トン。現存する動物の中では最大(Wikiより)……ということは、確認体長よりも大きなクジラを、国立科学博物館は再現(?)してしまったということなんですかね……。
国立科学博物館には、屋内にもマッコウクジラの全身骨格標本が展示されています。これは2019年の特別展「大哺乳類展 2」で展示した標本です。詳細はコチラから。
↓ この標本の裏側に回ると、全身骨格標本が見られます(どちらかといえば、こちらが表ですね)。全長は13.77メートル。
●ペルセトゥス・コロッサスの身体の特徴は?
●全長20メートルに対する体重の推定がおかしくない?
まず、研究論文の全文を載せたわけではなく、抜粋して記事化されたマスコミの記事は、省略された点が多いです。そこで多くの読者は「体長20メートルで、体重が340トンもあるのはおかしい!」と思ってしまう可能性があります。それに対してChatGPTの回答は以下の通りです。
体重340トンというのが、いくらなんでも過大すぎるというコメントは、最も多かったです。
おそらくこうしたことは以前から言われていることでしょうね。先日、上野の森美術館で開催された美術展『恐竜図鑑』では、古今のパレオアート……古生物を描いた絵画……を中心に展示されていました。特にイグアナドンなどは、この100年だけで大きく姿を変えてきました。それだけイグアナドンの化石が多く発掘されてきた証拠であり、研究が進んでいる証左でもあるのでしょう。
●この大きな体で浅瀬で暮らしていた?
●そんな巨体をどうやって維持していた?
さらに、ペルセトゥス・コロッサスが、この巨体を維持するために、どうやって捕食(食事)していったのかに疑問を感じる方も多かったです。
この食事=捕食に関する疑問については、ChatGPTは下記のように答えています。
ペルセトゥス・コロッサスの巨体を維持するために、どれくらいの食事が必要なのか? という点について、ヤフコメで散見されたので、重ねてChatGPTに話しかけてみました。
食事=捕食については、化石を分析した研究者たちも当然、疑問を抱いている点です。「巨体の維持のためにどれだけの食事が必要なのか?」また「そもそも、海に、ペルセトゥス・コロッサスを養えるだけのエサの生産力があったのか?」ということも重要です。ということで、今回のペルセトゥス・コロッサスから分かったことは、「史上最重量の生物の発見」だけではなく「約3900年前の海には、その巨体を維持するために必要な、大量のエサを供給し続けるだけの生産力を有していた」ことの発見でもあった……そんな可能性が高いと言われています。
●なぜそんなに巨体化したのか?
そもそもなんでそんなに体を大きくなったのか? というのも謎ですよね。次の質問に関しては、わたしは思いもよらなかったので、質問もChatGPTの回答も興味深いものでした。
■「我々に答えよりも多くの疑問を残しています」
発掘チームに参加……もしくは率いた、アルド・ベニテス=パロミノ(Aldo Benites-Palomino)さんは、自身のXアカウントで次のようにツイートしています。
「長さが20メートル以上に及ぶこの巨大生物は、約3800万年前のペルー沿岸の浅い海域に生息していました。そして、この生物は我々に答えよりも多くの疑問を残しています」
■参照資料
博物館(Museo de Historia Natural)の公式Facebook
博物館(Museo de Historia Natural)のプレスリリース(PDF)