『王羲之と蘭亭序』後期 @東京国立博物館
現在、東京国立博物館では、『王羲之と蘭亭序』という特集企画が開催されています(追加料金不要)。
観に行くのは約1カ月ぶりなので、同特集も後期に突入。以前と共通のものもありましたが、今回は細かい説明は気にせず、感覚的に いいな と思った文字だけをピックアップしていきます(一部、絵もあり)。
※前期レポートのリンクも貼っておきます。
最近ChatGPTを使ってみているのですが……「坐間朗抱観天地」「山外清流自古今」の意味を聞いてみると、下記のような“それっぽい”回答が戻ってきました。注意:内容の正確性は不明です。
↑ こちらは整った書体に惹かれたというよりも、わたしの場合は、何が書かれているのかなぁ? と気になったから、記録に残しておきました。そう思って書き出してみると……そうかと……こちらの解説文に記してあるとおり、これは蘭亭序の中の、お気に入りの一節を抜き出して書いたものなんですよね……。
↑ これもそれっぽい回答でしたが……「蘭室」を「蘭の香り漂う静かな書斎」という解釈は、とても詩的な雰囲気ではありますね。実際には、「蘭の香り」のような「高徳の人……友人」といった使い方をしているようです。
蘭亭序から、この言葉を抜き出したのが、宣統帝溥儀だという点が趣深い気がします。「蘭室静言得知已」……こんな風に語り合える友人が欲しかったでしょうね……って、考えてみたら、誰もがそう思いますよね。
「唐の白居易が、洛陽の香山で8名の友人と開いた雅会を描く『九老図』に題した文章を、ゴシック体のような奇抜な楷書で記します」と解説にありました。そもそも白居易(白楽天)が書いた文章を、金農という人が、独特の字体で記したということでしょうかね。
白樂天居洛中佗尚當九老之會其序曰
胡吉劉鄭盧張六賢皆多丰壽予六次爲
偶于東都敝居履道坊合成尚齒之會相
顧旣醉且懂静而思之此會齐有因各◯
詩以之時會昌五年三月二十四日其
丰又有二老丰兒絕倫同歸故鄉◯來斯
會續書姓名丰齒寫其形兒于贵右与前
七老題為九老贵
なんて書いてあるのか、画像検索して誤った文字があるものの、上記のような文字列が……書かれているのではないかな……と。これをさらにChatGPTに流し込んで「以下の中国の詩を、日本語で説明してください」とお願いしつつ、意味を考えていくと……「白居易は九老の会の序文に、以下のように記しています。胡・吉・劉・鄭・盧・張の六賢人を迎えて、会昌5年の3月24日に尚歯会……つまりは老人の集いを開催できましたと。みなさんいい感じに酔いながら詩を詠み合ったんですよ。前述の六人+白居易の七老に加えて、あと2人が参加して、九老会となりました」といった感じでしょうか。それほど……たいした話ではなかったなと……。
むしろ、この奇抜な書体で記した「全農」という「揚州八怪」の筆頭とも言われる方に興味が湧いてきました。こんどゆっくりと調べてみたいと思います。
■ちょっとおしゃれな感じのイラストもありました
中国の、主に書を紹介するフロアには、《做王翬槎溪芸菊図巻》という絵巻に、目を引かれました。日本でいえば明治にあたる1880年に描かれたということですが、とても洒脱なタッチのような気がしました。
ただし、タイトルに《做王翬》とあることから、「正統派山水の大家の一人である王肇 (1632~1717) の画風に倣ったもの」ということが分かるようです。
■メモ……林宗毅さんについて
『蘭亭序』の前期でもそうだったように、今回の後期でも、林宗毅さんが寄贈してくれた作品が、あちこちにありました。そこで、気になったので、その林宗毅さんを調べてみました。
林宗毅さん(1923~2006)は、台湾三大名家の第一に挙げられる板橋林本源家(はんきょうりんほんげんけ)の嫡流の出身です(つまり、もともとは台湾人…中華民国人)。林本源家は歴代にわたり学問・芸術に造詣が深く、曽祖父・祖父の代には、台湾県板橋に清朝末期の福建の造園技術の粋を集めた林本源邸「林家花園(庭園)」を築造(現在は寄贈して、同地の自治体が管理しています)。
林宗毅さんは(日本が統治していた時代に)台北帝国大学を卒業し、東京大学大学院を修了。昭和48年(1973)に日本に帰化されたそうです。台湾、日本、米国などで実業家として活躍されるかたわら、中国の書画を収集。晩年には、明清時代から近代に至る約1000点に及ぶコレクションを、台北の国立故宮博物院、和泉市久保惣記念美術館および東京国立博物館に寄贈しました。
和泉市久保惣記念美術館の定静堂コレクションは、平成12年(2000)に林宗毅さんから寄贈された、19~20世紀の呉昌碩、斉白石、豊子愷など約300名の画家たちによる中国近代絵画412件……台湾故宮博物院には、宋代から近代までの70点の書画が寄贈されています。ということは、東京国立博物館には、500件以上の中国書画が寄贈されていることになりますね。
以上です。
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