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日本のとクリソツな、朝鮮半島の家形容器と剣
東京国立博物館の魅力の一つが、日本関連の収蔵品だけじゃない……ということです。もっと言えば、時代や地域が分断されていないということですね。
例えば「〜〜考古博物館」や「〜〜博物館/美術館」は、色んなところに見られます。それは、特定の時代や地域、または人などのカテゴリーを、深く探るためには良いでしょう。ただし歴史や美術も、その多くは時代や地域で、それぞれ特徴や傾向はあるものの、別の時代や地域と関連し続けてきたことは、言うまでもありません。
例えば、下の古墳時代(5世紀)の『家形容器』は、和歌山県の大同寺古墳から出土したものです。解説パネルには「日本列島では(この家の形をした容器は)他に類例がなく……」と記されています。
ただし、「朝鮮半島の陶質土器には、こうした家の形をはじめ、鳥や馬、船など、さまざまな種類がある」のだそうです。
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「へぇ……なんで一つだけ、こんな容器が出土したんだろうね?」と思いますし、「じゃあ、その朝鮮半島の家形容器も見てみたいな」と、解説パネルを読んで思う人がいても不思議ではありません。
それがですね、“今なら”としか言えないのですが(まぁいつ行ってもあるので、たいていの時期は置いてあるんだと思うんですけど)、同じトーハクの東洋館へ行くと……解説パネルで言っていた、朝鮮半島で出土した「家形容器」があるんですよね。それが、これです……
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和歌山で出土したものとは少し異なりますが、よく似ていますよね。
大きく異なるのは、醤油差しの口のようなものがあること。お酒を入れて、器に注ぐのにちょうど良さそうな構造です。また、煙突みたいな大きな口が、和歌山のはラッパのように広がっていて、斜めについています。一方の朝鮮半島産のは、円筒形の口が屋根の真上に垂直に設けられていますね。あとは、朝鮮産のは柱が多くて、“家”というよりは“倉庫”と言った感じだし、閂(かんぬき)などまで再現されていて、和歌山産よりもリアルです。
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■古墳時代の大刀
東洋館には、時期的に日本の古墳時代にあたる、朝鮮半島で出土した大刀も、たくさん収蔵されています。
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難しい漢字が並んでいてイヤになりますが、要は「柄の先端の輪っか(環頭)の中に、鳳凰の像が一つついている(単鳳文)太刀」ということですね。
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これは、撮り忘れたのですが、刀身に「この大刀を所持する者に何も畏れることはなく、高い地位と富が保証される」という言葉が刻まれているそうです。名前に有銘とあるのは、「銘文が刻まれていますよ」ということ。あと、|環頭も凝っていますね……ということですね。
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こちらは「柄頭の環(輪っか)の中に、龍が装飾されている大刀」ということです。
上で出土した5〜6cの大刀と、似たような日本の大刀は、同じトーハクの平成館の考古室に置いてあります。先ほどの「家形容器」の近くです。例えば、以前も紹介したことのある、東大寺山古墳出土の『家形飾環頭大刀』も、その一つです。(いちおう国宝です)
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こちらは「家の形をした飾りが付いた、柄頭に輪っか(環頭)のある大刀」ですね。
また、熊本県の江田船山古墳の『銀象嵌銘大刀』も、古墳時代の5〜6世紀のものが出土しています。(こちらも国宝です)
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この魚や鳥のイラストのほか、以下のような銘文が裏側に刻まれています。
治天下獲□□□鹵大王世奉事典曹人名无利弖八月中用大鉄釜并四尺廷刀八十練九十振三寸上好刊刀服此刀者長寿子孫洋々得□恩也不失其所統作刀者名伊太和書者張安也
(天の下治らしめし獲□□□鹵大王の世、典曹に奉事せし人、名は无利弖、八月中、大鉄釜を用い、四尺の廷刀を并わす。八十たび練り、九十たび振つ。三寸上好の刊刀なり。此の刀を服する者は、長寿にして子孫洋々、□恩を得る也。其の統ぶる所を失わず。刀を作る者、名は伊太和、書するのは張安也)
「この刀を持つ者は、長寿であって、子孫まで栄えて治めることがうまくいく」と記されていたらしく、朝鮮半島産の有銘大刀と同様に、守り刀的な感じだったことが分かります。
ちなみにこの大刀なのですが、大正の終わり頃に、日本刀の研師が研いだそうです。「え? なんで、そんなことする?」ってツッコミたくなりますが……まぁ当時の人が、研げばもっと銘文がハッキリするだろうってことで、研師に依頼したんでしょうね。そうしたら研師さんが、「よっしゃ! 研げって言うなら、やってやろうじゃねぇか。見てろよ!」と、本気で研ぎ始めちゃったのかもしれません。でも、研いだところで、サビは落ちていっては、また異なるサビが出てくる……「ほんとにこれ、研ぎ続けていいんスカ?」ってなって、担当者が見たら……もう銘文も消滅するほどに研いでくれちゃってた……的な流れだったようです。で、Wikipediaを読むと、この研いだ時に、銘文が消えた可能性が高い……と書かれています。みんなで「あちゃぁ〜」って感じだったでしょうね。
日本のは、各地の出土品を集めているので、様々なものがありますね。
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もちろん4〜5世紀の銅鏡も、平成館には日本のものが、東洋館には中国や朝鮮半島のものが、数え切れないほどではありませんが、数えるのが面倒になるほどの数が揃っています。
では古墳時代より前の時代はどうだったかと言えば、例えば土偶……というか、フィギュア(偶像)系ですよね。これは、各地の地域性が濃厚に出ているような気がします。
例えば日本のは、遮光器土偶をはじめ、素直に「人間だな」とは思えないような土偶が多いですよね。
中国はまた、中国エリアの中でも、様々な文化があったのでしょうが、例えば下の写真は、1〜4世紀の中国・ヨートカンの像です。『テラコッタ小像及び破片』とあります。ヨートカンは、現在の新疆ウイグル自治区に位置します。大谷探検隊が持ち帰ったものです(黙って持ってきちゃったものではないことを願います)。
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猿は分かりやすいですね
また、隣国ではありませんが、シリアの前2000〜1600年頃のフィギュアは、日本の土偶と肩を並べるほど、奇っ怪な姿かたちで、興味深いです。
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こうやって、あぁ朝鮮や中国とは、関連性が高いんだよなとか、影響はしているけど、それぞれ特徴もあるよね…と比較できるのも楽しいです。
もちろん、そんな比較とか難しいことしなくても、東洋館を見て回るだけでも楽しいです。けっこう、日本の紹介をしている本館や平成館よりも、エスニックな東洋館の方が好みだ……って言う人も多いでしょう。
あと、本館や平成館が混んでいる時は、東洋館へ避難するのもおすすめです。特に上階へ行くほど人が減っていくので、静かに過ごしたい人はぜひ。
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