見出し画像

東京国立博物館は、展示室も敷地内も春らんまん

東京国立博物館(トーハク)では4月7日まで、たしか全館を横断した毎年恒例の「博物館でお花見を」という特集のようなイベントのようなものが開催されていました。いつもよりも桜が描かれた作品が多く展示されていたんです。

そこで、これまで目を向けることの少なかった、器などを見て「へぇ〜、こんなにきれいな器があるんだなぁ」と思ったものを、少しnoteしておきます。


■春っぽい茶器や鉢

仁阿弥にんなみ道八どうはちさんによる《色絵桜樹図透鉢(いろえおうじゅずすかしばち)》です。たしかトーハクの博物館ニュースに載っていて、これはみたいなと思って見に行きました。「鉢」と書いてあったのは覚えていますが、写真を見たときには、他の茶器と同じくらいの大きさなのかと思いました。でも実際に見てみると、想像よりも大きなもので、器の内外に描かれた桜をはっきりと見られました。

仁阿弥にんなみ道八どうはち
《色絵桜樹図透鉢(いろえおうじゅずすかしばち)》

せっかくなので仁阿弥にんなみ道八どうはちさんについても記しておきます。おそらく生没年は不詳なのですが、解説パネルには「江戸後期の京焼の名工」であり「この作品はその代表作のひとつ」なのだそうです。うんうん……これは素人のわたしが見ても素敵な感じです。名工と言われる人の代表作をいきなり見られてラッキーです。

鉢については「内外に白泥と赤彩で満開の桜樹を表わし、巧みに配された透かしとで、桜の空間を作り出しています」とあります。ほんと、外側だけでなく、内側にも同じ質と量の桜の木が描かれて、すごい! の一言。斜めから見ると、外側と内側の両方に描かれた桜を、同時に楽しめるのが、なんとも言えません。

仁阿弥にんなみ道八どうはち
《色絵桜樹図透鉢(いろえおうじゅずすかしばち)》
仁阿弥にんなみ道八どうはち
《色絵桜樹図透鉢(いろえおうじゅずすかしばち)》

実は別の日に、全く異なる展示室で、ある器が素敵だなぁと思って、念入りに写真を撮っていました。それがですね……いま改めて解説パネルを見てみたら……上のと同じく仁阿弥にんなみ道八どうはちさんの作ったものでした。なんか、うれしいw

仁阿弥にんなみ道八どうはちさん
《色絵 桜楓文 木瓜形 鉢 G-960》

こちらは桜と楓(かえで)……桜と紅葉、春と秋が描かれている鉢ですね。鉢と言っても、こちらは煮物を入れたらおいしそうに映えそうだなという感じの大きさです……と言ってもフタはありませんので、何を入れたらよいでしょうかねぇ……ほうれん草の胡麻和えなどはいかがでしょうか(単にわたしが好きなメニューなだけですが…)。

仁阿弥にんなみ道八どうはちさん
《色絵 桜楓文 木瓜形 鉢 G-960》
《色絵波に三日月文茶碗》
仁清、 「仁清」印| 江戸時代・17世紀

こちらは、週末に見たものです。仁清というのは、野々村仁清ということでしょうかね。何度か、その名前を聞いたことはありますし、トーハクでも他の作品を見たことがあったのですが、どんな人なのかは知りません。解説には「仁清色絵陶初期の茶碗。箱書きに『宗和老ヨリ来仁和寺焼…』とあり、この茶碗が茶人・金森宗和(1584-1657)の指導のもとで焼かれていた頃のものとわかります」とありますが、今のわたしには、読んでも内容が頭に入ってきませんw まぁいいです。波と三日月が素敵ですし、少し上から見ると、よく博物館で見る茶碗よりも薄い感じがして、描かれている絵にぴったりな清涼な雰囲気です。

もっと上から見ると、茶碗の中がとってもキレイです。なんというのか、芸術性の高い茶碗って、凸凹しているものが多いですよね。あれって、茶碗として使った後に、隅々までよく洗わないと、どんどん茶渋で汚れていきそうだなぁって思うんですけど、この仁清の茶碗はスッキリとツルンッとしているから、キレイに使い続けられそうだなぁと思いました。まぁもう何十年も使われたことはないんでしょうけど……。

全体的に、呑み口は真円に近いし、前述のとおり内側もツルンッとしているし、形がシンプル。なのに、その呑み口の一部分が一直線で、あれっ? って思いました。ただ、解説文を読むと「呉器茶碗(高麗茶碗の一つ)を思わせる椀形(わんなり)をわずかに歪ませ、そこに色絵が施されています」とあります。わたしが感じた違和感は、業界内では「べつにぃ〜、ぜんぜん珍しくはないですよぉ」ということのようです。でもこの形で、ここに口をつけてお茶をいただいたら、唇の両脇からお茶が漏れ出てこないか心配です。

■トーハクの敷地内で春を探す

と……そんなふうにトーハク館内をそぞろ歩きしていたのですが、とっても混んでいて……人混みが超絶苦手なわたしは、息苦しくなり、屋外を散歩することにしました。トーハクは、展示品だけではなくて、草木が、とても静かに見られる場所でもあるんですよね。

もちろんこの時期は、上野公園の他エリアと同様に、トーハクの敷地内にも、たくさんの桜が咲き誇っています。特に日曜日は晴れていたので、見上げて見たときの桜が映えましたね。

平成館近くの喫煙所あたりから、表慶館の方を見た時の桜もきれいです。来週あたりには、花びらがはらはらと散っていく様子が、これまたきれいなことでしょう。下の写真は土曜日に撮ったもの。やっぱり空は青い方がいいですね。

桜もきれいなのですが、桜以外の草木も花を咲かせていて、まさに春らんまんといった雰囲気です。

下の木は、いつも「なんだろう?」と思って、煙草を吸いながら見ているのですが……推測ではカリンではないかと思うのですが……そんなに大きな実がついていたかなぁ……といつも記憶があいまいなのでnoteしておきます……詳しい方いないかなというのと、秋にまた振り返って、実がついた時に思い出そうと思います。

これまた喫煙所近くなのですが、いまはイロハモミジも満開です。ここのイロハの剪定は、目線の高さの枝も残してくれているので、花がよく観察できて良いです。きれいですしね。この時期は、本当に緑色が絶妙な色合いで……秋の紅葉も好きですが、わたしは春のイロハの方が好きです。

先日は自宅近所を息子と歩いていた時に、イロハモミジを見かけて「イロハモミジが満開だよ。見てみ」と言うと、「え? これって花が咲くの?」って言うから「咲くんだよ。ほらっ」と言って、枝を手繰り寄せて見せてあげました。「あっ、ほんとだね。咲いてるね」という息子に「だろっ?」と言って、ドヤ顔しておきました。

あとは雑草系ですね。わたしの専門は、むしろこちらです。トーハクって、キュウリグサの名所なんですよね。都心では、まぁ気にしていればあちこちに咲いていることに気が付きますが、これだけブファッとかたまって咲いているところは、河川敷などへ行かないとなかなかないような気がします。

これは本館から平成館へ向かう道端……同館初代館長の町田久成さんの胸像下に咲いているキュウリグサです。昨年、白いネジバナを見つけたところですね。それで、撮りたい……撮りたいと思いつつ、キュウリグサって、焦点をあわせたり露出なんかを設定したり、風が止むのを待ったりと、撮る時に、なかなか手間のかかる草なんですよね……。それをですね、終始人通りのある道端にしゃがみこんで撮るのって、小心者のわたしには、なかなかに勇気の必要な行動で……「このおっさん、なにしてんだろ?」って、奇行だと思われるだろうなぁと。

まぁそれで、トーハクの敷地内であまり人のいない場所……そんなところにわけいって、キュウリグサを見つけて撮っておきました。なかなかに良い感じに撮れた気がします。

↓ これはトーハクではない別の場所で、先日撮ったのですが、形が分かりやすく撮れたので、一緒に貼り付けておきます。

オオイヌノフグリやぺんぺん草(なずな)も、たんぽぽも、美味しそうに咲いています。なんかこの季節の葉っぱだったら、おいしく食べられるんじゃないか? って思うくらいにみずみずしく柔らかそうです。

平成館前には、カラスノエンドウも多いですね。ここの草たちは、少し高く盛り上がったところに地面があって……って、説明が難しいのですが……しゃがまなくても、ちょうど視線の高さで草たちを眺められる好立地なんですよね。でも、時々一斉に刈られてしまうので、えぇ〜あんなにキレイに咲いていたのに、刈っちゃったのぉ( ;  ; )……というポイントでもあります。

そうやって草を探して、敷地内の奥地……校倉造の旧十輪院宝蔵のまたさらに奥にまで分け入って、しゃがんで草を撮っていたらですね……展示室の監視員さんの一人が、近くを通りかかったんです。展示室でよく見かける、苦手な監視員さん。なにが苦手かというと、他の人とは違い、明らかにわたしのことを「監視している」……仕事熱心な方です。他の方からも視線を感じることはありますが、例えば振り返って見ると「わたしはあなたのこと見ていませんでしたよ」という素振りで、素早く視線を外すか、もともと顔や視線を向けずに監視しますよね……トーハクに限らず、どこの博物館や美術館でも同様だと思います。でも、この監視員さんは、わたしが視線を感じて振り返ると……ジーッとわたしを見ています。怖いので、最近ではこの方がいる展示室はサササッと逃げるようになりました。ちなみに、その方から注意を受けたことは一度もないんですけどね……ということで、ここまでの話は「気のせい」かもしれません。

でまぁ敷地の奥地で……普通の人は行かないような場所で、桜の花や下の写真の花を撮っていたら……そこの近くにはスタッフ用の小道があって、そこを前述の監視員さんが通りかかったんです……「よりによって…」という感じですw 小心者のわたしは、別に悪いことをしていないのに(いや、小道を外れた草地に入っているのは一般には悪いことなのかも…)、なんか「ヤバい」って思ってしまいました。はたから見たら、誰が見ても、わたしはおかしい行動を取っていると思われるでしょう。博物館で、誰も行かない道から外れた奥の草地で、しゃがんでジーッと何かをしている……しかもオッサンですからね……。それでわたしは顔を向けずに監視員さんの様子を探ってみると……もうこれが怖いくらいに、顔をわたしに向けながら歩いているんです……「あなたそこで何しているの?」と言いたげな少し怒ったような表情で……。そのスタッフ導線が、スタッフ専用ゲートや壁を迂回するため、わたしを囲うようにコの字に通っていて……ずーっと顔をこちらに向けているんですよ……わたし悪いことしていませんよね? そう見えるかもしれませんけど……していませんよね? って思って……もう草のことなどぶっ飛んで、そのまま帰りたくなりました(帰らずに東洋館へ行きましたけどw)。

そんなことを思い出させる苦々しい花ですが、ムラサキナバナというそうです。アブラナ科ということなので、菜の花と言ってもよいのでしょうか。

ちなみにトップ画像は、上野公園のあちこちに咲いているハナニラ……英名は、Spring star flowerです。上野公園だと、特に都美術館の脇から奏楽堂へ向かう小道の右側に……今年はまだ見ていませんが、きっとブファ〜っと咲いているはずです。撮ったのは、表慶館の裏側……資料室側あたりですから、都美術館の方から飛んできたのかもしれませんね。そんなことが可能なのか知りませんけど……。





いいなと思ったら応援しよう!