見出し画像

新たに重文指定された数々が、東京国立博物館で初お披露目!

2023年1月31日から、東京国立博物館トーハクの平成館で、令和五年 新たに重要文化財に指定された、日本各地の書籍や絵画がお披露目されています。過去のnoteで、王羲之おうぎしの模本など、(江戸城の)三の丸尚蔵館しょうぞうかん所蔵の3件が国宝に指定されたなどと記しました。今回は、その同時期に重要文化財に指定されたものが展示されているんです。

■そのインパクトが凄かった十二神将像

展示場所に入ると、まずはド〜ン! と「撮影禁止」のマークが立ちふさがりますw 「そかそか……さすがにお預かりしているものなので、撮影NGなのね」とガッカリしましたが、気を取り直して入っていくと、全くのノーマークだった岡崎市の瀧山寺たきせんじ所蔵の十二神将が、心にズキュン! と刺さりました。

トーハクに展示されていたのは、十二神将のうちの1軀です。鎌倉時代の中期から後期に製作されたそうですが、これまで見てきた十二神将とは異なる表情だったんです。

髪の毛は、ほかの十二神将像と同じく、怒髪天を衝くという様子です。わたしと同世代の人であれば、着ているものを含めて、鳥山明先生が『ドラゴンボール』で描いた、サイヤ人を、脳裏によぎらせるはずです。ほかと異なるのは、そうした怒髪天で筋肉ムキムキで甲冑もまとっているのですが……青い玉眼の目がクリッとしていて、めちゃくちゃかわいい! 目がかわいい十二神将ってなんだよ!? っていうか、そのギャップがすさまじいのです。

ちなみに今ちょちょっと調べたら、「サイヤ人=十二神将」説は、ネット上でもチラホラと見かけます。そうなのですが、鳥山先生は絶対に、この岡崎の瀧山寺たきせんじの十二神将を見ているだろうなと勝手に思いました。なぜって、先生は瀧山寺たきせんじのある岡崎からそう遠くない、名古屋市出身。やっぱり瀧山寺たきせんじをモデルにした可能性が高いような気がしますw

現在トーハクに展示されているものが、十二神将のうちのどれだったかを覚えていないのですが、うま神将かうさぎ神将、もしくは、干支が分からない神将……そのどれかだったと思います。(展示リストにも詳細がしるされていないんですよね…)
・Instagramではコチラ
瀧山寺たきせんじの公式サイトはコチラ

■足利氏によって大事にされた瀧山寺たきせんじ

十二神将像を見たら、がぜん|瀧山寺《たきせんじ》に興味が沸きました。調べてみると、地元では……というか天台宗では、とても有名なお寺のようです。

まずは伝説では、奈良時代に役小角えんのおずぬが、青木川で拾った金色の薬師如来像を祀る吉祥寺として創建したといわれているそうです。青木川は、瀧山寺たきせんじの脇を流れて、岡崎市内で矢作川に注ぎ込まれます。役小角の後は一時衰退しますが、すぐに熱田大宮司家が大旦那となり、鎌倉期には源頼朝や、三河の守護で寺の檀越だんえつとなった足利氏、そして江戸期には徳川氏から大事にされたといいます。

場所は岡崎城からは7kmの場所。注目すべきは徳川家光の時代には、瀧山寺の境内に東照宮が建てられていることです。家光さんは、日光、上野や浅草など、各地の東照宮をラグジュアリーに増改築したうえで、岡崎の地にも東照宮を建てていました。それが瀧山寺です。岡崎には松平家の菩提寺である、大樹寺があります。その大樹寺に、東照宮を建てるという計画もあったようですが、結局は瀧山寺にしたそうです。

ここからはわたしの全くの推測です。岡崎周辺には、松平家発祥の地が山奥にあるほか(松平郷)、岡崎城や、松平家の菩提寺の大樹寺と法蔵寺、それに源頼朝由緒の瀧山寺があります。徳川家光が、いずれに東照宮を建てたとしてもおかしくありません。その中で、瀧山寺が選ばれたのは、やはり家康が尊敬する源頼朝だけでなく、足利氏に由来する寺だったからなのかなと思います。しかも(いつからなのか分かりませんが)天台宗ですからね。徳川家のもう一つの菩提寺である増上寺は浄土宗なので、どれだけ天台宗にこだわったのかは分かりませんが……そうしたことが関係している気がします。ちなみに松平家発祥の地や、本多家の岡崎城、法蔵寺には、それぞれ徳川家の寄進によるものではない東照宮が建てられました。

そうした古刹なので、寺宝がものすごいです。国宝こそないものの、代表的なのが、源頼朝の遺髪ならぬ、あごひげと歯が胎内に納められたという聖観音菩薩立像です。近年、X線で調査した結果、頭部内に小さな納入品が、針金で吊るされていることが判明したそうです。

2021年に岡崎市美術博物館で開催された企画展のリーフレット
『聖観音菩薩立像(部分)』

この聖観音菩薩立像と、四面四臂の梵天ぼんてん、それに帝釈天たいしゃくてんの三尊は、鎌倉期を代表する仏師、運慶とその長男の湛慶たんけいによって作られたと、伝えられています。

このほか、今回新たに重要文化財に指定された十二神将像(12軀)と日光・月光菩薩立像があるほか、本堂と三門も重要文化財に指定されています。

瀧山寺たきせんじの本堂(画像:Wikipediaより)

■トーハク平成館でのお披露目会

そのほかにもトーハクの平成館では、『令和5年 新指定 国宝・重要文化財』が、所狭しと並んでいました。個人的には撮影禁止ということで、テンションが下がってしまったのと、そうなると記憶に留められるのが1点か2点だけなんですよねw

もう一つ、楽しみにしていたのが「茨城県風返稲荷山かざかえしいなりやま古墳出土品」でした。これは妻の実家に近い(遠くない)こともあり、地元の博物館へ見に行こうかとも思ったのですが、トーハクに出張展示されて嬉しかったです。

『広報かすみがうら』で、少しだけ写真で見られます。

前期の展示が2月12日までで、後期が2月13日~2月19日までということで、展示期間が短いです。できれば、もう1度か2度は見に行き、ほかの展示もじっくりと観覧させていただきたいと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?