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原田直次郎の描いた愛らしい表情の『龍』
先日……と言っても1カ月くらい前のことになりますが、東京近代美術館へ行ってきました。特別展へも行ったのですが、印象に残っていたのはMoMAT展……所蔵品展……です。
その時に、原田直次郎さんが護国寺に奉納して、同館に寄託されている《騎龍観音》が展示されていました。まぁなんとも大きなキャンパスに油彩で描かれた作品ということで、MoMATの展示室の場所は変わることがありますが、たいていいつ行っても見られる作品です。
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原田直次郎さんが明治23年(1890年)にキャンパスに油彩で描いた《騎龍観音》
今回が何度目かの対面なのですが……前回見たときの記憶は……「あんまり好きな絵ではないんだよなぁ」というものでした。結局、洋画なんですよね。洋画だから悪いっていうわけではなく、日本人が長年描いてきた画題を、ブームに乗ってキャンパスに油彩で描いてみましたよ……という感じが、あまり好きじゃないんですね……きっと。
「西洋かぶれしやがって」みたいな雰囲気がわたしは好きではないんです(笑)
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でも今回は、展示室にわたしと監視員……しかもジロジロと監視しない良い人……しかいなかったこともあり、じっくりと観てみました。そうすると「なんか意外と良い絵なのかもなぁ」という感じがしたんです。なぜかっていうのは言語化できないのですが、なんとなくそう感じたんですよ。
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こうやって近くで筆致を観られると、原田直次郎さんに限らずですが、描いた方の息吹みたいなものが感じられて、わたしはその作品に好意を抱いてしまうようです。「好きじゃないけれど、この絵もすごく気持ちを込めて描かれているんだもんね」という、作者へ敬意を払わなくてはいけない……みたいな気持ちになります。
改めて、《騎龍観音》が描かれたのは明治23年です。維新から23年……ず〜っと、西洋に追いつかなければいけないと危機感を抱きながら絵を描き続けてきただろう明治人の作品です。特に原田直次郎さんが27歳前後の頃の作品なので「負けてたまるかぁ〜!」という気持ちも強かったでしょう……誰と競争していたのかは分かりませんけどね。
わたしが「西洋の何が良いっていうんだよ。日本画のほうが良いに決まっているじゃないか」と、余裕をぶっこいて言えるのも、美術分野だけでなく、政治経済を含むあらゆる領域で、原田直次郎さんを含む……もちろん我が家の父祖も含めて……日本の古人が歯を食いしばって頑張ってくれたおかげです。
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そんな風に思いながら観たわけではありませんが、観音さんにも当時の明治の人の緊張感が表れているようにも思えます。まぁわたしには、その雰囲気が息苦しいんですけどね。
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そんな緊張感の漂う騎龍観音なんですけどね……描かれている龍は、なぜか楽しそうな表情に見えました。人を救いに降りてきてくれる観音さんが、こういう愛らしい龍に乗ってくるっていいですね。目がキラッキラしているのは、油彩ならではのような気がします。希望に満ち溢れているように思えますよね。「うっひゃ〜! 観音さん!? 今日はどんな人を助けるんスカ!?」と、ワクワクしているようにも未メス。
なんとなく龍って「開運」な感じがしますけれど、怖い顔をしていることが多くないですか? 「あなた本当に開運をもたらしてくれるんスカ?」みたいな……「わたしのことを襲いに来ています?」みたいな怖い表情の龍が多いです。そんななかで原田直次郎さんの描いた龍が、愛らしくなってしまったのはなんでなんでしょうね。これも洋画の影響なんでしょうか。
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この原田直次郎さんの龍を観たあとのことですが、わたしは『手塚雄二展 雲は龍に従う』を観に行っています。以来、この展覧会の名前にある「雲は龍に従う」という言葉が心の中に、ず〜っととどまっています。
雲と龍の関係が気になっているんですよね……。手塚雄二さんの龍には、雷雲が描かれていました……というのは嘘で、わたしが手塚雄二さんの『叡嶽双龍(えいがくそうりゅう)』を観て、「雷雲が描かれている」と思い込んでいるだけです。そう感じた……というだけです。
原田直次郎さんの《騎龍観音》はどうかと言えば、背景の海は荒れていて、空には暗雲が立ち込めています。また龍の長い尾には、雲をまとわせていますね。きっと原田直次郎さんの龍のイメージも、雷雲に近いものがあるのでしょう。
だから何? という話なのですが、龍は雲なんでしょうね。龍=雲です。ただそう思っただけです。
■原田直次郎さんのおもしろい家系
Wikipediaで原田直次郎さんの家系を調べたら、すっごく面白くて、また仕事をほったらかして夢中になって調べてしまいそうなほどでした。おもしろいって言っても、美術に関係するわけではありません。
また機会があったら調べてみようと思います。今日は眠いので寝ます。
◉柳生悦子 著『史話まぼろしの陸軍兵学寮』,六興出版,1983.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12013071
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