詩 壊れた自転車
壊れた子供の自転車があった
それを自転車屋に持って行った
棄ててもらうために
壊れた自転車を押してると
あのキズ、この跡
曲がったレバー
それらが僕に語りかけた
それら全てに思い出があった
*
長い間ずっと放ってあった
なんとなく前を通りかかり
遠くから自転車が
僕を見つめてて
もしやと思い行ってみれば
それは僕の子の自転車だ
拙いひらがなで嬉しそうに
小さく名前が書いてある
僕は壊れた自転車を
しばらく眺め
大きくなった子の背丈と
見比べた
こんなに小さな
自転車だったかと思い
錆びだらけの自転車が
輝いていた頃の事を思う
*
僕はパンクした自転車を
すこし屈んで押しながら
あの頃を思い出させてくれた
自転車に感謝した
もう会うこともない自転車に