見出し画像

エッセイ 「海辺のカフカ」

*はじめに
2002年に出版され世界中で読まれた本を、
僕は今読んでいます。とても楽しく。
僕と同世代の年齢では僕くらいでしょうか。
今頃この本で感動しているのは。
村上春樹の昔の本を買い漁っているのは。

僕は村上春樹の本を読んだことがなかった。

あることがきっかけで、
僕は「笠原メイ」という名前を知り、
誰なのかをネットで調べたら、
村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」に
出てくる登場人物だと知った。

僕は気になって「ねじまき鳥クロニクル」
を古本屋で3巻買って読み始める。
なんとなく僕に境遇が似た主人公に共感を
得ながら読み進んでいくと、
思っても見ない展開に読むのがやめられ
なくなる。
最初はよくある昼ドラ的な内容の話しかと
思って読んでいたのだが、1巻の中盤から
話しはガラリと変わってゆき、
何処に向かってゆくのか予測不能の内容に
なってゆく。
けれどもその予測不能が期待を裏切らない。
こんな面白い本をこの年まで知らなかった
なんてモノを知らないにも程がある。

「ねじまき鳥クロニクル」を読み終わって、
次に読んだのが「女のいない男たち」。
自分とも重ね合わせながら、
あっという間に読んでしまった。
この本は短編集だが、最初に出てくるのが
映画で数々の賞を獲得している
「ドライブ・マイ・カー」だ。
僕はまだ映画は観ていない。

次に読んだのが「海辺のカフカ」。
ここのところずっと村上春樹ばかりである。
一度あの文章に触れるとその心地よさに
酔ってしまう。本に求めているものを、
過不足なく、そっとさし出してくれる。
僕の求めていたものがここにある。
これが文章の力なんだと思い知る。

「海辺のカフカ」はつい最近読み終わった。
正直、今、ロスト感が拭えない。
本を読んでこんな風になったことも
あまりなかったことだ。

この本の中で、たくさんの本や、音楽や、
映画が紹介される。
話しの流れの中で違和感なく登場する。
その中で、ベートーヴェンのトリオ「大公」
が何度も出てくる。
僕はとても気になってCDの「大公」を
買って聴いてみた。
こんなにも村上春樹が本を通して勧める
のだからきっと素晴らしい曲に違いないと。
そして僕は最近は「大公」ばかりを聞いて
いる。
4楽章からなるその曲は、とても美しく、
聞いていて飽きることがない。

次に読もうとしているのは、
「騎士団長殺し」全2巻だ。
既に買ってある。けれどまだ読まない。
何か読むのが惜しいのだ。
なので今は、「東京奇譚集」を読んでいます。

僕は最近楽しい。
好きな作家の本を読むだけで、こんなにも
楽しくなれる。
僕はこれらの本に出会わせてくれた
「笠原メイ」に感謝している。

最後に「海辺のカフカ」に出てくる
たくさんの印象的な言葉のうちから、
特に僕のこころに残った言葉を載せる。

あなたさえ覚えていてくれたら、
ほかのすべての人に忘れられてもかまわない。

村上春樹「海辺のカフカ」下巻p428

いいなと思ったら応援しよう!