エッセイ スズメの宿
晴れた天気に誘われて
珍しく図書館に出かけた。
本を読むのが極端に遅い僕は
返す期限がある図書館の本は
あまり借りない。
それでも借りに出かけたのは
春の陽気のせいだろう。
図書館の駐車場を歩いていたら
きれいに刈られた植木の枝に
百羽近くのスズメがにぎわう。
春の陽ざしに照らされた植木にとまり
日向ぼっこをしているようだ。
しばらく眺めていたかったけれど、
人目が気になってしまう僕は
とりあえず図書館へといくことにした。
帰りにまた見にこよう。
図書館のお勧めコーナーにあった本を手に
図書館カードを出してみたら
十年前に使ったきりだ。
いろいろと手続きをして
一冊だけ本を借りた。
そのあと、
スズメの宿を訪ねてみたら
一羽のスズメもいなかった。
スズメのいなくなった植木の枝を
僕はじっと眺めていた。