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未だに観られない映画『MISHIMA ――11月25日・快晴』


ポール・シュレイダーが監督した『MISHIMA』、なんでいまだに日本未公開なのだろうか? いい加減、公開してもいいのではないか。

アメリカでは1985年の秋に公開されている。『Mishima: A Life In Four Chapters』というのが原題だ。邦題は『MISHIMAー11月25日・快晴』の予定だった。

この映画は、アメリカ人が三島由起夫の生涯を映画化するということで、当時、ずいぶんと話題になっていた。緒形拳が三島由起夫役で、沢田研二も出るらしいとか、断片的な噂が行き交っていた。今と違ってインターネットなどなかったので、映像情報は皆無で、妄想だけが膨らんでいた。

監督が、ポール・シュレイダーで、制作にコッポラやルーカスが名を連ねていた。スタッフはアメリカ人で、役者は日本人、会話は日本語で、撮影も日本で行われた。映画化の権利は、三島の遺族からちゃんと買って正式に作られたのだが、出来上がったものを見た遺族が、三島の同性愛者的な描写にクレームをつけたとか、右翼が抗議しているとか、そんな理由で日本では公開されなかった。

カンヌ映画祭では好評だったらしいが、日本では公開されていない。日本ではビデオやDVDにもなっていないので、ほぼ見ることが出来ないし、出演した人たちも、この作品については、あまり語っていなくて、謎の映画だった。

現在、YouTubeに断片がいくつかあがっていて、それらを見ると、なんとなく雰囲気がわかる。アート映画というか、結構な実験映画のようだ。美術は日本人の石岡瑛子が担当していて、その視覚的なインパクトが強すぎて、観客を選ぶ映画のようにも見える。

タイトルに4チャプターとあるように、三島の思想を、テーマ別に4章に分けて、それぞれを描き、そこに通底するように、三島の人生のエピソードを描いた、ちょっと複雑な形式の映画のようだ。その複雑さに独特のアートワークが加わって、実験映画っぽくなっているのだと思う。

海外では、興行的には失敗しているが、評価は高いらしい。緒形拳や沢田研二、そのほか、かなりの数の俳優が総動員されて出ていたらしい。それにしても、今でも日本では公開できない理由があるのだろうか?

当時、公開に反対していた、遺族も右翼も、もう亡くなっているだろうから(すいません)、障壁は低くなっているのではないか? そろそろ観られるようにして欲しいと思う。


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