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書籍レビュー『プロセスエコノミー』

『サブスクリプションモデルの時代に合ったビジネスの捉え方』

モノが飽和し、人々の興味が所有することから体験や感情に移ってきた時代において、価値を生み出すものは最終成果物のアウトプットから、その過程であるプロセスに移行している、というのがプロセスエコノミーの概念である。

本書では例としてキャンプやバーベキューが挙げられているが、確かに宿泊や食事という目的だけを考えれば用意されたホテルやレストランを利用する方が効率的である。しかし、自分たちで準備する経験自体を楽しむ部分に利用者が価値を見出しているからこそ、最近のアウトドアブームが起こっているのであろう。

プロセスエコノミーの世界では、これまでの前提が大きく崩れていく。
従来の製品開発においては完成品を世に出すのが当たり前であり、その途中の製品を見せたり、開発過程を開示する意味はなかった。しかし、プロセスエコノミーでは完成品というただ一つの正解を目指すのではなく、修正を前提としてユーザーと一緒に製品を作り上げていくプロセスが重要になる。

リーンスタートアップという考え方が浸透して久しいが、一企業だけで製品・サービスを完成させるより、早くローンチしてユーザーの反応を見ながら、早く・細かく修正を加えてより良い製品・サービスにしていくことが最近のビジネス、特にSaaSを始めとしたサブスクリプションモデルのビジネスでは求められている。

当然、プロセスを開示することにはリスクがある。
自社のノウハウが流出する可能性もあれば、中途半端な製品・サービスに対する批判の声も出るであろう。
前者に対しては、本書では著者は、情報化が進んだ現代において情報は秘匿していてもいつかは流布するため、それよりも情報をいち早く開示することで、世界中から情報が集まってくる中心に自らを置くことが重要だと主張している。

後者については、昨今のカスタマーサクセスの考え方に基づいて対応していくことが重要だと考える。
それは、顧客に買ってもらうことがゴールではなく、買ってもらった時点が顧客がその製品・サービスで成功を得るためのスタートであり、製品・サービスの提供企業はそこからユーザーの声を聞いて絶え間ない改善を続けていく、ということである。
そのためには、勇気をもって真摯に顧客の声を聞かなくてはいけない。

昨今のこうした、ワンショットではなくサブスクリプションを前提としたビジネスが増加していく中で、プロセスエコノミーの考え方は様々な示唆を与えてくれると感じる。

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