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書籍レビュー『実践 顧客起点マーケティング』

『ブランディング効果の定量化』

本書は、顧客1人(N1)の体験を元に、その商品の根源的な価値である「プロダクトアイデア」とマーケティングコミュニケーション上のメッセージである「コミュニケーションアイデア」を生み出すことに主眼を置かれて書かれている。マスを意識したアイデアでは結局は誰にも刺さらない、というのが大きな主張であり、この点は大いに納得できる。

だが、その点よりも私が大きく感銘を受けたのは、著者が顧客アンケートを元に作成したフレームワークである「9セグマップ」だ。
こちらは、顧客の現在の商品に対する認知・購買の状況と、次回の購買意向であるプラン度選好を元に、顧客を9つにセグメントし、マッピングしたものである。
こちらの何が良いかというと、これまで同じ枠で考えることが難しかった「販売促進」効果と「ブランディング」効果を、対立することなく合わせて考えることができる点である。

特にブランディングについては、世の中に自社製品の認知を高めるためにテレビCMを始めとして様々な施策を実施されるが、その成果を測ることが非常に困難であった。かつては販売促進効果もそうだったのだが、デジタル広告などの台頭によりクリック数やコンバージョン数など、かなり販売促進面では効果を数値で測ることができるようになった。

短期的な数値目標の達成に重きを置くと、どうしても効果が可視化しやすい販売促進施策に投資の比重を置きがちである。
しかし、中長期的にユーザーに自社商品を認知させ、将来の顧客を作っていくブランディング施策もやらなくてよいわけではない。
本書の9セグマップはこうした投資の比重をどこに置くべきかを、論理的な数値を元に判断できる非常に優れたメソッドだと感じる。

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