書籍レビュー『逆襲の広報PR術』
『中小・ベンチャー企業の広報・PRは新規開拓営業に近い』
広報・PRとは、自社で費用を負担して広告を出稿するのではなく、マスコミ・報道媒体に自社を記事として取り上げてもらうための活動である。
広告と異なり、自社でコントロールして媒体に出稿するのではないため確実性は低く、売上に与える効果も把握しにくい。
中小・ベンチャー企業では目先の売上を上げないと企業が立ち行かないという現実がある。
そうした日常の中で直近の売上に直結しない、広報・PRという活動に力を割くことは、難しいかもしれない。
しかし、広報・PRに成功すれば資本規模の小さい中小・ベンチャー企業でも全国的に有名になり、結果的に売上が大幅に成長するという可能性がある。広告に出稿するだけでは狙えない、高い認知を獲得できる可能性があるのだ。
本書はマスコミ・企業の広報担当・PR会社経営という3つの視点から企業の広報・PRに関わってきた著者が、そのノウハウを中小・ベンチャー企業の広報担当者向けにまとめた書籍である。内容は非常に具体的かつ実践的に記載されており、すぐに実行に取り掛かれるものが多い。
本書を通して著者が一貫して主張しているは「認知度の低い中小・ベンチャー企業がマスコミの報道を獲得するのであれば、相手の媒体のことを調べて相手に対して有益な情報を提供できるよう工夫すること」である。
そのために、
・プレスリリースの一斉配信に頼るのではなく個別にマスコミ関係者と関係を構築する
・独自のメディアリストを作成する
・競合他社の報道実績から可能性のあるメディアを見つける
・マスコミと合う際は過去の報道を必ずチェックする
という手法が示されている。
読んでみて広報という仕事の印象が大きく変わった。
中小・ベンチャー企業の広報担当者に重要なのは相手が求めるものを察知する能力、相手に合わせて情報を編集する能力、取材が獲得できなくてもあきらめずにアプローチを続ける能力であり、新規開拓営業に近い能力が重要だと感じた。
広報担当者の採用時に検討すべき事項や、外注する際の考え方にも触れられており、中小・ベンチャー企業でこれから広報を強化したいと考えている経営者、広報担当者に抜擢された担当者におススメしたい書籍である。