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小説|140字小説6作

 X(旧Twitter)に載せていた140文字の小説を6作、こちらにも投稿します。
 ジャンルはごちゃまぜです。●が現代で、◯はファンタジーが舞台となっています。

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●子供のころに打ち切りになった未完結の漫画を今でも大事に持っている。歳月を染み込ませた表紙は薄れて頁は黄ばんでいた。数年越しに続編が発売された。読んだその夜、街路灯照らす電柱の下、ゴミ置き場に置いてきた。これが漫画の最終コマだ。作者自らがゴミにした物語の結末を代わりに決めてやった。

● あなたはいつも佇んで、何も言わずに私の渇きを潤してくれる。夏には体に沁みるような冷たい飲み物を、冬には心をほぐすような温かい飲み物を、いつも携えていてくれる。私が与えた分だけ、応えてくれる。先の見えない夜道には、足元を照らしてくれる。そう、それは自動販売機、あなたなのです。

● たい焼き屋に行列が出来ている。僕も並ぶことにした。小倉とクリームと芋餡にした。「まとめてお包みしてよろしいですか?」訊ねる店員に「クリームはすぐ食べます」と、答える。家に帰ったら二つ目であることを君には黙っておこう。 (お題『冬という言葉を使わずに冬を表現する』)

● 昔々あるところに創作活動をしている童がおった。童はTwitterのアカウントを作り、創作のモチベーションにして日々を過ごした。ところが歳を重ねるうちに創作をする時間は減り、日常ツイートが多くなっていった。おぬしが見ているこれは、その創作アカウントの成れの果てなのじゃ。

◯旅人が無名の剣で、魔物に襲われている少女を助けた。お礼に少女は、花畑の丘で花の冠を作り、旅人に差し出した。旅人は片膝を付き、頭を垂れる。この瞬間、少女は姫になり、旅人は勇者になった。世界を救うことが出来ず、追放されたかつての勇者は、遠い過去を想い、花の香りに涙した。

◯「私が先にダンジョンで力尽きたら、君が運んでいるお宝は君の物だ」連れの冒険者と交わした契約を荷物持ちは思い出すと、お宝が入ったリュックを下ろした。倒れ伏す冒険者を背負い、全力で出口へと走った。逃げ足の速さだけが取り柄の臆病者は叫ぶ。宝物は君なんだ。もっと冒険をしよう。

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 最後までお読みくださり、ありがとうございます。
 140文字というと気軽に書けそうですが、限られた文字数で読み手に伝えるのって難しいな、と思いました。精進あるのみです。

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