酒粕 -発酵の基本知識-(53)
酒粕とは
酒粕は日本酒を造り出す工程で生まれる副産物です。
日本酒の製造工程ででる絞り粕であり、酒を仕込んだ際に出来る「もろみ」を搾った後に残ったものが酒粕と呼ばれています。
粕、という名前がついている酒粕ですが、日本酒を造る目的以外では必要のないものとされ、産業廃棄物として処理されることも少なくありません。
しかしながら、近年酒粕に含まれる高い健康効果と汎用性が今一度見直され、注目を集めるようになってきました。
古くから酒粕は、漬物や甘酒などに利用されており、現在のの飽食社会の前の時代には、高い栄養成分を豊富に含んだ貴重な食材であり、大切な栄養源でもあったのです。
日本酒の売上の低迷により日本の食卓から消えつつあることが危惧されてきましたが、近年の蔵元の努力により日本酒の良さが見直され、あわせて酒粕の持つその高い健康効果と汎用性が改めて注目されるようになってきました。
酒粕の種類
板粕
薄い四角い板状のもの。何枚かの層になっており、1枚づつ剥がすか、ちぎって利用します。
あらかじめちぎった状態のものもあります。
練り粕
ペースト状でパックの容器に入ったもので、大吟醸などの酒粕はこのタイプが多く見られます。
ばら粕
板粕と練り粕の間のような柔らかさでフレーク状になったものをいいます。
みりんを絞った後のみりん粕もこのようなばら粕の状態のものが多くなっています。
どちらも効果に違いはありませんが、お酒の搾り方やお酒の種類の違いにより異なります。
蔵元によっても味や値段が異なりますのでお好みのものを探すのも楽しみのひとつといえます。
酒粕には旬がある
酒粕はスーパーなどで年間を通して購入することが可能ですが、酒粕にも旬があります。
新酒が出回る1月から4月がもっとも旬な酒粕が手に入る時期です。
新鮮な酒粕は微生物が豊富で力も強いため、さまざまな種類のお酒の新鮮な酒粕を、是非この時期に入手し、利用するとよいでしょう。
安定した製造をされている酒の酒粕は、酒蔵によっては通信販売を行っており、入手することが可能なところもありますので、扱っていれば年間を通して購入することが可能です。
酒粕の保存方法
酒粕を購入したら賞味期限内に使いきることが大切ですが、それ以上保存することも可能です。
その場合、空気が入らない密閉袋に入れ、冷凍保存すれば1年ほどは保存することができます。
表面に白い粉状のものが出来る場合がありますが、これはアミノ酸の結晶成分である「チロシン」というタケノコを茹でたときにでてくるものと同じですので心配ありません。
酒粕は酵素の宝庫
酒粕に含まれる酵素の種類は、100種類以上にものぼることがわかっています。
その中には消化酵素や代謝酵素、食物酵素など多岐にわたります。
酵素はできるだけ食べ物から補うことが理想とされており、発酵食が体によいとされている理由の一つでもあります。
ただし、その力を有効に得るためには加熱しすぎないことが重要となります。
酵素は熱変性に弱いため、なるべく生で摂取することが理想的といえます。
そのためには、野菜と組み合わせたあえ物や、スムージーなどのドリンクで摂取するとよいでしょう。
食材の保存性が増す
発酵食の大きな特徴として「食材の保存性が増す」という事がありますが、酒粕も例外ではなく、酒粕自体が生きた発酵食品です。
酒粕を密閉保存し、状態が良ければ何年でも保存することができます。
酒粕には多くの有益な微生物が働き、雑菌の繁殖を防いでくれます。
従って食材を合わせておくことで保存性が格段に向上するのです。
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