動ける体幹を作るレッスン④ ~脊椎のカーブを変えて身長を伸ばす(一瞬だけ)
人間の脊椎は、ゆるいカーブを描いています。
今回の目的は、この脊椎のカーブを伸ばして、全体としての長さを変えてゆきます。といっても一時的、しかも数センチだけですが。
人間の脊椎を横から見ると、S字カーブがありますね。背中のあたり(胸椎)は後ろ側が膨らむように、腰のあたり(腰椎)は前が膨らむようになっているのがわかります。
このカーブは、人間が二足歩行をするようになったときに、適応してできたものと言われています。歩くときにはこのカーブが衝撃を吸収する働きをして、脳を保護しているのです。
脊椎の動きといえば「前かがみ」「後ろにそらす」ですが、使いようによって、もう少し器用な事もできます。
・脊椎の長さを変える
①胸椎の操作
背骨のうち、肋骨のついている高さを胸椎といいます。
この胸椎は後ろに膨らむようにカーブしているので、これを浅くします。
少し前に書いた肋骨の操作で、肋骨を持ち上げながら背中を少し凹ませるようにすると、カーブが減少します。
②腰椎の操作
胸椎と骨盤の間、腰に当たる部分が腰椎です。こちらは前に膨らむようにカーブしているので、そこを凹ませます。
具体的には、お腹に力を入れて凹ませる要領です。
③骨盤の操作
腰椎と骨盤の継ぎ目は、斜め前方向を向いています。そこで、骨盤を少し後ろに傾けて継ぎ目を上に向けてやります。
②と③の動作を同時に行うことで、腰椎のカーブが浅くなります。
①②③の動作をすると、背骨全体のカーブが減少し直線に近くなるので、身長が伸びます。
・何に使うのか
そんなことをして何に使うのか、という疑問をお持ちの方、もっともです。
題名こそ「身長を伸ばす」ですが、実際にはその方向で使うことは殆どありません。
むしろ頭の高さを変えずに腰を落とすのに使います。
①前傾姿勢を作る
背中を伸ばした時、骨盤が後ろに回るので、脊椎は全体として少し前に傾いた状態になります。スムーズな動き出しや、組技などのときに気づかれずに体勢を変えるのに使えます。
余談ですが、子供雑誌によく載っている
「椅子に座っている人の額を指でおさえると立てなくなる」
という実験。
この方法だと頭の位置を変えずに前傾姿勢を作れるので、簡単に立ち上がることができます。
②重心を落とす
身長を伸ばすのではなく、頭の位置を変えないまま腰を落とします。
重心を低くして安定したり、動き出しを楽にしたりできます。
正中線の話で書いた「水鳥の足」という技法を使う時、全身をそのまま落とすのではなく腰だけを落とすことで、上半身をそのままに足を自由に使うことができます。
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