「力を抜くと重心が落ちる」とはどういうことか?
重心は、身体各部の重さで決定されます。普通に考えると、姿勢を低くしないかぎり、重心の位置は下がりません。
でも、普通に立っているのに重心が落ちて安定していると感じるときがありますよね。たいてい、余分な力が抜けている時。
・力を抜くと重心が落ちる?
「力を抜くと重心が落ちる」はよく言われるのですが、どうしてそうなるのでしょうか?
実際に重心が落ちている可能性もあります。
例えば筋肉は、力を抜いているときにはダランとなりますね。
ダランとなって垂れ下がれば、いくらか重心が下がることはあるでしょう。ただ、その量はたかが知れています。
実際には、重心が下がっているのではなく、重心が下がっているのと同じように安定が良くなっていると考えた方がいいでしょう。
・ビルの制振装置
柔らかさで安定する、というとビルの制振装置を思い出します。
地震が起きた時、高いビルは揺れて力を逃がす免震工法になっています。しかし免震工法は先端の揺れが大きくなりすぎるので、揺れを制御する制振装置が設置されていることがあります。
原理は簡単で、ビルの頂上部に大きな振り子を設置するのです(バネで支えたオモリだったり、場合によっては水がはいったプールのことも)。
装置全体が右へ移動すると、振り子は慣性の法則によって動きが遅れます。
振り子は遅れて右側へ振れようとしますが、その時に箱を左側に向かって引っ張るので力が相殺され、揺れ幅が小さくなるのです。
・柔らかい身体はタイムラグを作り、動きを吸収する
身体が柔らかいのは、あちこちに振り子がついているようなものです。
一部が動いても、その力が別の部分に直接伝わらないので、タイムラグが生じます。このタイムラグを使って動きを相殺することができるので、結果として安定が上がるものと考えますが、どうでしょうか(身体操作のタイムラグは、相殺だけでなく軽く動くのにも使えたりします)。
ただし人体は振り子ほど単純な構造物ではありません。
立ちながら、あるいは動きながら柔らかさを維持するのは矛盾しているので、練習が必要になります。
振り子のようにパッシブな作用だけでなく、正中線の話で書いたようにアクティブな調整作用も働いているはずです。
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