本1冊にいくらまで出せますか?
先日、代官山の蔦屋書店に行った。
洋書やビジュアル系の雑誌が充実している本屋さんだ。
3棟にわかれたフロアを「マガジンストリート」という各国の雑誌を集めたコーナーがつないでいる。気になる雑誌を立ち読みしながら、歩いていくと時間を忘れてしまう。この日は雑誌が目当てだったので、だいたいチェックし終えてから、全コーナーをざっと流しみた。
こういうときに、思わぬ棚から本がうったえてくるときがある。amazonの検索では自分に関係ありそうな本しかおすすめされないけど、思いもよらない偶然の出会いこそ、楽しい。
旅先で偶然、おもしろい場所を見つけたときの高揚感にも似て。思わず見入ってしまう。その日は2冊の写真集に出会った。両方とも洋書で、「ソ連のバス停」と「メキシコのサボテン」の写真集だ。
ソ連のバス停は、これ。
カナダの写真家クリス・ハーウィグが撮影した『Soviet Bus Stops』。WIREDの記事に詳細あるので見てみてください。
めくってもめくってもバス停。共産主義的に武骨で機能的なもの、謎のオブジェと化していてアートなものなど、13か国150か所のバス停を巡った記録だ。
ここでバスを降りたら死ぬんじゃないか、と思うような見渡す限り何もないところにあるバス停。すごい。得体のしれないパワーのある写真集。
そして、もう1冊のサボテンの写真集。相当なサボテンフリークが撮影している。南米の山岳地帯などに自生しているサボテンを写真に収めることをライフワークとしているようだ。かなり分厚い。めくっても、めくってもサボテンだ。
しかし、そこには驚くべきバリエーション。花を咲かせたもの、手足を広げたもの、チンパンジーの顔のようにみえるのまで。植物というよりは、宇宙人だ。冷戦当時に核兵器で植物化したエイリアンなのでは…と、想像を膨らませるに十分。異様なフォルムだ。(肝心の本のタイトルを忘れて、検索しても出て来ずに調べようがなくなってしまった)
この2冊は何度もページをめくるうちに、トリップするような感覚があって、とてもよかったのだけど、両者ともいかんせん高かった。バス停は5000円ぐらい、サボテンは12000円もするのだ。美術書や写真集を買い慣れていないので、尻込みしてしまった。
本に5000円以上出すのには、かなり勇気がいる。
わたしはマガジンストリートを、行ったり来たりして3時間たっぷり悩んだ。日が暮れてしまった。涙を呑んで、買わなかった。そして1か月以上たった今も思い出す。あーサボテンと、ソ連のバス停。
作り手として考えると、取材費、装丁、紙代とあれこれ経費を考えると、これでも安いだろうと思う。読み手として、いち本好きとしては、ジャンルや装丁にもよるけど、本は3000円以内ぐらいが妥当と思ってしまう。
みなさんは、本にいくらまで出せますか?