美しき人生と1歳児の私に、乾杯。
一年前の今日、私が生まれた。
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母に出て行けと荷物を投げられ棚をぶつけられ絵を踏み潰された7月9日、母の友人であるKさんに助けを求めた。母よりも歳が上のKさんは何年も前から仲良くさせてもらい、悩み相談などによく乗ってくださっていた。しかし一方であまり頼りたくない性分もあり、親のご機嫌取りをしてどうにか凌いでいたが今回ばかりはどうしてもダメだとヘルプを出した。
そしてそこでKさんから提示された「シェルターに逃げる」という案に頼ることにした。しかし電話をすると声が聞こえてしまう上に、母は家のゴタゴタを他者に話されるのを異様に嫌悪していたから難しかった。Kさんが「じゃあこちらから色々話しておくから、シェルターから電話が来たらコソコソっと出てみる?」と言ってくれたのでそうさせてもらった。
「シェルターの人と電話したからしばらくしたら電話がかかってくるはず、ちゃんと出てね」とKさんがDMをくださったので(やり取りはいつもインスタのDM)通知音を消し、スマホがいつ鳴るのか、急に親が来てスマホを没収してくるのではないかとドキドキしながら待っていた。(家は二階建てだったので二階に籠もっていた)
電話が来たのはお昼すぎか午後4時頃か、あまり覚えていない。その日は確か金曜日で「土日は基本難しいのよ、週明けじゃだめかしら?」とシェルターの人には言われたので「このまま家にいたらどうなるか分からない。週明けまで生きているかも不明だ」と涙ながらに細い声で訴えた。本当に怖かったのだ。
一度電話を切り、しばらくして2回目がかかってきた。「重大な事態だと受け止めましたので明日来ていただいて大丈夫です」と伝えられた。家族以外の人(Kさん)が取り次いでくれたのでシェルターの職員さんは少しいぶかしげな人間を見るような雰囲気を漂わせていたがあまり詮索しないでくれた。「家にいるままで大丈夫ですか?ホテルに泊まっても良いと思いますが」と提案されたがお金が勿体なかったので丁重に断った。7月10日の11時にとある駅で落ち合う事となった。
二階は寝室だったが親はなぜかその日上がってこなかった。一階の玄関に私の全ての荷物が山積みにされていた。以前から出て行けと言われ親に勝手に一部の荷物をまとめられていたのでその中から通帳やマイナンバーカード等が入っていた紙袋の位置を親が寝静まった夜中の内に確認した。中々寝付けなかったが目をギュッと瞑り、むりやり眠った。
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目が覚める。スマホを確認したら昼前だったので大急ぎでシェルターに電話をした。さすがに寝坊しましたとは言えず親に見張られて中々家を出るタイミングが無かったと嘘をついてしまった。バスの時間を調べ、玄関で適当に着れそうな服を探し大急ぎで身につける。
それまで親は寝ていたが私が立てた物音でモゾモゾと起きてきた。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。通帳等が入った紙袋と財布とスマホを近くにあったトートバッグに突っ込みそっと家を出る。暗かった玄関から出たから目に太陽の白さが染みた。
背中や足にまとわりつく過去と親、生まれ育った家を置いて違う地に、環境に出るあの一歩を一生忘れることは無いだろう。
一年前のこの時間、私はシェルターに着いて泣きながら親に出すハガキを書いていた。知らない人が運営しているシェルターというよく分からない場所に転がり込んだ自分が、まるで自分ではなく誰か別の人間が体験しているような不思議な感覚に襲われていた。それほどに現実感がなかった。
そんなこんなで親から離れて1年、シェルターから引っ越し自分だけの部屋を持って9ヶ月になる。失われた20年をこの1年で取り返せたなんて思わない。でも変わった、変われた自分も必ず存在する。来年の私は何をしているのだろうか。未来に希望を持てるのは過去の私が踏ん張り、そしてそれを応援し、支えてくれる人達が側にいたからだ。
挫けないで良かった。素直になって、助けてもらえて良かった。勇気を出して良かった。一歩踏み出した先の未来がこんなにも彩られているなんて思ってもいなかった。
生まれて一年。
美しき人生と1歳児の私に、乾杯。