ホーチミン旅行記
9月に2泊4日のベトナム一人旅をしてきた。人生初の一人旅。しかも海外。
こんなにもnoteにおあつらえ向きなトピックがあったにも関わらず、性欲減退の衝撃が強すぎてすっかり忘れていた。
私が訪れたのは、ベトナム南部の大都市・ホーチミン。
今回の旅の目的は、①ブイビエン通りでナンパする②中央郵便局から甥っ子に絵葉書を送る③戦争証跡博物館に行く④本屋巡りをする⑤ベトナムの会社で働く元上司に会う の5つだ。
②と③は初日の午前中に終わらせ、午後は大きい公園を散歩したり、美味しいフォーを食べたり、贅沢なマッサージを受けたりしてのんびり過ごした。
ホーチミンの街は、どこへ行ってもおびただしい数のバイクが走り回っている。朝夕の通勤ラッシュの交通量は圧巻だ。
車とバイクがこんなにも密集していてよく事故が起きないものだと感心したが、翌日道路の端っこでバイクと一緒に倒れてる人がいたので事故は普通にあるようだ。
噂には聞いていたが、本当にバイクが歩道を走っていてびっくりした。歩道で後ろからバイクにクラクションを鳴らされた時は「プップーじゃないだろ!」と思ったが、相手が邪魔だからクラクションを鳴らすのでなく「ここ通りますから気を付けてね」という注意喚起の意味で鳴らしているのだという。そんな文化の違いも面白い。
郷に入っては郷に従えだし、せっかくなので私もバイクタクシーの後ろに乗ってみた。南国の風を切ってビュンビュン走るのが最高に心地いい。若い男の子が運転するバイクの後ろに乗って知らない街を走り回れるなんて、映画みたいだ。勝手にローマの休日気分を楽しめたので、チップは奮発しておいた。
ちなみにだが、タクシーを使う時はGRABというアプリが大変便利だ。現在地と目的地を入力すると、料金と道のりが表示されて近くにいるタクシーがすぐ迎えに来てくれる。
ぼられたり遠回りされたりする心配がないので、初めての一人旅でも安心かつ快適にタクシーを利用することができた。運転手さんへのチップも、アプリを通じて支払える。気前よくチップに50000ドン支払っても、日本円にして約300円。安すぎる。日本で一杯3000円のラーメンを食べる海外の観光客たちもこんな気持ちなのだろう。
スーパーや市場を見て回った後、さっそくブイビエン通りに移動した。
ホーチミン市内のブイビエン通りは、世界中のバックパッカーが集まる歓楽街だ。安宿、屋台、バー、クラブ、夜遊びに必要なものがギュッと詰まっている。
結果から先に書くと、①は全くできなかった。
スペイン語圏の貧乏学生がいたらいいなという期待を胸に勇み足で訪れたものの、日が暮れる前から飲み始めたせいで、街が盛り上がる頃にはかなり酔ってしまった。
路面に立ち並ぶド派手なクラブが爆音でEDMをかけると、身軽な格好の人たちがどこからともなく集まってくる。
賑やかになっていく通りを眺めていたら、なんだか無性に寂しくなってしまった。
昼間のワクワクした高揚感がいつのまにか消え去り、知らない国に一人でいることが急に心細く感じられた。
もしかするとあれが人生初のホームシックだったのかもしれない。疲れと緊張のせいで酒が一気に回り、感受性がおかしくなっていただけの可能性もあるが。
さらに、人が集まるにつれてだんだんといかつい輩が増え始めたので「ここで潰れたら生きて帰れない」という確かな手ごたえもあった。
こうして「寂しいし怖い」というシンプルかつ凡庸な理由により、タクシーですごすごと逃げ帰った。
情けない話だが、初の海外一人旅なのでそこは許してほしい。
部屋に直帰するのもそれはそれで寂しいので、ホテル近くのクラフトビールバーで飲み直し、帰りにコンビニに寄った。日本以外にも女1人で夜道を歩ける国があるのは驚きである。
コンビニの店内に入ると、日本人の若い男の子がレジで店員となにやらやりとりをしていた。
どうやら現金かあるいは電子マネーを忘れたかしたらしく、代金が払えずに数本のビールを冷蔵庫に戻していた。「あら、大変ねえ」くらいの気持ちで眺めていたのだが、あの時私がビール代を払ってあげればよかったのでは?と翌朝になって気が付いた。
ビールをおごった上で一緒に飲もうと誘えば、もしかしたらおちんちんチャンスに繋がったのでは?
ベトナム滞在中最大にして唯一のチャンスを逃していたことに気づき、ホテルで一人地団駄を踏んだ。痛恨の極みである。
やはり性欲が落ちたことによって反射神経が鈍っているようだ。毎朝大陰唇にダンベルをぶら下げてスクワットし、鍛え直すしかない。
翌日は④⑤をそつなくこなして楽しく過ごし、3日目の朝8時のフライトに乗って帰国した。滞在時間50時間のまさしく弾丸旅行であった。
結果として、珍道中には程遠い一人旅の手本のような平和で楽しい旅になった。
ホーチミンでの女ホル(女性ホルモン)分泌ポイントといえば、若い運転手のバイクの後ろに乗れたことと、カフェの店員に
「エクスキューズミー、マダム?(すみません、奥様)」
と言われたことくらいである。
次回の一人旅はタイ・バンコクに行こうと思っている。ブイビエン通りでの失敗をリカバーするために無茶し過ぎて、無言の帰宅とならないよう気をつけたい。