笑い療法の父「ノーマン•カズンズ」

ノーマン・カズンズ氏はアメリカの雑誌『サタディ・レビュウ』の編集長。
彼が仕事で精力的に働いていたある日、膠原病の一つである硬直性脊椎炎にかかってしまいました。
この病気は、発熱と激しい体の痛み、脊椎の硬直で体が動かしにくくなる病気です。
特に体の痛みはすさまじく、カズンズ氏の言葉をそのまま用いるなら、「1日中トラックが体の上を走り回っているような」激痛だったそうです。
しかもこれは、カズンズ氏の症状を診た専門医によると、治る割合が500分の1しかないという難病でした。
じつはこの病気は、現在でも病気の原因は不明であり、予防法、治療方法も確立されていません。
しかし彼は、わずか数か月後に症状が改善し再び仕事に戻ることができました。

一体、彼は何をしたのでしょうか?
病気を克服するべく彼の実践したことは、2つです。
1つ目は、ビタミンCの大量摂取です。
彼はビタミンCが人間の免疫作用と自己治癒力を高めるために必須であることを医学誌を読んで知っていました。
このビタミンC人間の体の中で生成することはできません。
そこで彼は10グラムから25グラムのビタミンCを大量に摂取するようにしたのです。
もう1つは、たくさん笑うことです。
これは、精神的な負荷の「ストレス」という言葉を生み出したカナダのハンス・セリエ博士の言葉「不快な気持ち、マイナスの感情を抱くことは心身ともに悪影響を及ぼす」がきっかけとなっています。
カズンズ氏はこの言葉にヒントを得て「快の気持ち、プラスの感情を抱くことが心身に好影響を及ぼすのではないかと考えたのです。
彼はまず、ネガティブなことを考えがちな病院からホテルへ治療の場所を移しました。
リラックスできるホテルの一室で、知り合いのテレビのディレクターから差し入れてもらった笑えるテレビ番組の総集編を観てゲラゲラ笑ったのです。

効果はすぐに現れました。
それまで激痛で十分に眠ることができなかったカズンズ氏ですが、30分間大笑いしてからは2時間熟睡できるようになったのです。
2時間後に痛みで目が覚めたら、また30分間ビデオを見てゲラゲラ笑って、また2時間寝る、ということを繰り返しました。
なお、なぜ痛みが和らいだのかというと、その後の研究で笑うと脳からβエンドルフィンという鎮痛作用のあるホルモン(別名「脳内モルヒネ」)が出ることがわかっています
当初、1時間あたり115ミリもあった血沈(赤血球の沈降速度)がカズンズ氏の2つの実践のおかげで改善されていきました。
特に、笑いの前後で計測すると、血沈の値が5ミリも改善されていたというのですから笑いの力はあなどれません。
やがて膠原病の痛みは和らぎ、彼は歩けるようになり、短期間の闘病で仕事に戻ることができました。
この闘病体験談は、アメリカで出版され有名になりました。日本でも『笑いと治癒力』と題して出版されています。
その後彼は、この体験からUCLAの教授に転身し、精神免疫学の研究に取り組むことになります。
彼は快の感情が体に良い効果をもたらすということを確信しており、心筋梗塞になった際にもポジティブな感情で病気を克服しました。
カズンズ氏のこのような活動の成果をもって、笑いと健康との関係は社会的に認知され、科学的に追究されるようになり、彼は「笑い療法の父」と呼ばれるに至ったのです。
笑いとと健康の関係を明らかにする研究は最近になって目を見張る速度で進展しています。

「悲観することは時間の浪費だ」

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