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趣味≠読書【こころのままに、とりとめもなく(4)】

私は本が好きです。
でも、趣味を聞かれたときに「読書」と答えたことはありません。「趣味=読書」と言ったり書いたりすることに、なんだかしっくりとこないものを感じていたからです。

私の住む市には、4つの市営図書館があります。
2021年にオープンした新しい図書館以外の3館は、かなり古く、蔵書も刊行年の古いものが多いです。
一方、新しい図書館は、ここ数年に刊行された本が多く、SNSなどで紹介されている本を借りるのに最適です。いつか行ってみたい場所でした。

しかし、新しい図書館は市の中心部にあり、市の端っこ、田園地帯で生活する私にはなかなか辿り着けない天竺のような場所になりつつありました。

憧れた日から2年半。その図書館に行くチャンスは突然やってきました。

田園地帯で購入できないものが必要になったのです。ネット注文では済ませられない、自分で見てから購入したいものが。こうして、市街地に向かう理由ができたのです。

まず、目的の買い物を済ませ、それから図書館に向かいました。正面入り口の自動ドアが開くと、私の記憶にある図書館とはまったく違う、明るい空間が広がります。

館内をキョロキョロと見回しながら進むと、なぜかコーヒーとトーストの香りがします。そこは、壁もなく図書館と一体になっているカフェ。フタ付きなら館内で飲み物が楽しめるようです。なんて素敵な空間、他の人がいなければ住みたいくらい。

検索しておいた棚番号を頼りに、気になっていた本を探して館内をウロウロと進みます。他の人は、その図書館に慣れているのか、とても落ち着いた雰囲気でその場に馴染んでいるようです。誰も見ていないだろうのに、他所者を見るような視線を勝手に感じる。はじめての場所は、緊張してそう感じ、体温が上がってしまいます。「ヒューヒューだよ、熱い熱い」ってセリフが、牧瀬里穂さんではなく森口博子さんの声で聞こえてくるくらいにはテンパります。

表紙の情報しか持っていなかった私は、見つけたその本の予想以上のぶ厚さにたじろいだ。それでも、手に取りパラパラとめくる……(思ってたのと違って読みにくそう)。そして、そっと棚に戻す……。

せっかく憧れの地に来たのに、何も借りずに帰るのはもったいないと、また館内をウロウロとしては立ち止まり、気になった本を手に取ってはパラパラとめくり棚に戻すのを繰り返す。

そのうち、この繰り返している行為に心地よさを感じている自分に気がつきました。

手に取った本は、文章術の本から小説やエッセイ、写真関係など。自分の関心ある分野が洗い出されていく。また、手に取る基準はタイトルや装丁、それと直感(自分で言っておいて、ちょっとカッコいいと思う程度には厨二です)。どこに惹かれたのか考えるのも楽しい。

手に取り、パラパラした中から、3冊を選び借りることにしました。3冊中2冊は、はじめて出会った本です。

私が、気になる本を見つけても、すぐにネット注文せずに、図書館や本屋に行く理由はここにあるのかもしれません。ミスマッチを防ぐことと、未知なる本との出会い。家で得られる情報をはるかに超えた刺激にさらされる時間に、しずかに興奮するのが好きなんだな、と。

図書館や本屋に行くのが好きと言うくらいなら、読書が好きと言った方が聞こえがいいかもしれません。知的な感じもするし。でも、私は本を読むことも好きだけど、それ以上に見ることが好き。書棚から気になる本を選び出し、パラパラするのが好きなんだとあらためて認識しました。

さて、この癖(へき)のような趣味、履歴書などの趣味欄には、読書ではなく何て書いたらいいんだろうか。



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