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感想『白砂』鏑木連

幼少時代から苦労し、働きながら予備校に通い、大学進学の学費を稼いでいた女性 小夜。
彼女が自宅で何者かに殺された。
捜査を開始した刑事 目黒。
殺された彼女が握っていた巾着袋、そして慎ましい生活をしていた彼女に似合わないブルーダイヤモンドの指輪。
彼女は何故殺されたのか?

そして、同時に語られるのは、建設会社社長夫人の独白。
彼女は、交通事故で亡くなった夫の散骨を決意する。ところが、夫の遺骨が何者かに奪われ・・・
フラッシュバックする過去、そして、彼女が戦っている『ある病』の原因とは?

絡み合った女性達の運命を解きほぐした時、目黒は悲しい真実を知ることになる。

彼女達の共通点は、悲しい過去を背負いながらも懸命に生きようとしていたこと。
しかし、そんなお涙頂戴小説で終わらないのが鏑木先生。

端から見れば『良い人』であっても、人間は、怒りも苦しみも悲しみも憎しみも内包しているもの。
もちろん私の中にもドロドロした感情が流れています。
人間の負の感情を緻密に描き、犯人の生い立ち、心理、殺害に至るまでの葛藤を見事に言葉で表現されている鏑木先生の筆力には舌を巻きます。
『白砂』素晴らしいタイトルです。表紙の白鹿・夜空の意味は読んでのお楽しみです。


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