間違ってよかったのかもね


かつて、友に私はこう呼ばれた。

"ひとりSM劇場"

夏のとてつもなく暑い日に、ホットのコーヒーを買ってしまったり、サイドブレーキかけ忘れ坂でガードレールに突進したり、お花屋さんの時はお葬式会場でカメムシを踏んでとんでもない匂いを充満させた。

ちなみに、そのホットコーヒーは優しい教習所の先生がホットを飲みたかったんだよ!と言って、買ってくれた。アホなので結構、そうなんだ!と思ったけど、今にしてみると優しさでしかない。

お葬式会場がどうなったかは、何も言わずに去ったのでよくわからない。信じたくなかったとはいえ最低である。

バイトを始める前は、学校というコミュニティーに参って発病。地獄の日々だった。働き出してからいまの病名がつき、治療を開始。その頃はじめての恋人が出来たりして、世界が広がった。あまり思い出せないし、思い出したく無いけれど!

顔も名前も忘れていくから、人間とはびっくりだ。

仕事は飲食店二件からはじまり、旅館の清掃。お花屋さんは正社員として雇用してもらったけれど、ここはもっとちゃんと働けてたら良かったなぁと思う。

花束も作れるようになったし、アレンジメントは今でもやりたいくらい好き。
よく植物を買って帰ったりした。

今にしてみると、働く場所に恵まれていた。

うまくいかない時、先輩たちとご飯を食べながら相談した。とても救われた。
仕事と病気、ポンコツな自分が剥き出しになるのは辛かったけれど、気付いた。

人間って悪く無いのかもな。

学生時代絶望していた私がそう思えたのは、病気になってから出会った人たちのおかげ。

"本当に面白いのは、大人になってから"
中島らもさんの"今夜、すべてのバーで"の中にあったこんな感じのセリフ。

いまなら、その意味もわかる気がするんです。

あの時間違ってよかったかな、なんて、錯覚する。

いや、カメムシじゃなくて。(ごめんなさい)

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