【2】中庸化と節目のデザイン
化粧材では嫌われる節
横架材や板材の製材品に見られる節(ふし)は、一般的に節のある材料は嫌われ、節のない製材品は「化粧材」と呼ばれる。私自身にも幼少の頃の深夜、トイレに行くと壁の節が人の顔に見えて怖かった思い出がある。流通する木材は節が極力少なくなるように、植樹された時から成長・生産過程で丁寧に枝打ちされていく。
一般的に木目の美しさや節の数は製材品の価値を決定するが、節は、大きさ、位置、濃さなど製材品の個性を強く決定する要素のひとつである。
節目としての建築とその部分
節は幹枝葉に栄養を全体にめぐらせるための節目(接合点)である。節を通して木々は枝葉を広げ、栄養を蓄える。これまで設計の際には「建築単体ではなく、まちとの繋がりや広がり」を意識してきた。生活や暮らしといった日常とまちや地域や自然、人や家族、その繋がりと広がりを建築やその部分のデザインを通して考えてきたように思う。「節目のデザイン」はそのような意識から考えついた言葉である。
節目
時節、季節、音節、文節などの節目(区切り)の意味を持つ言葉がある。建築のプロセスには着工、上棟、竣工などの様々な節目があり、建築が出来上がるとき、また継続して利用され続ける限り、常に建築は歴史や人生の節目にある。
接合と節目
部材のつなぎ方を考えるのは建築の基本である。接合部分をどのように納めるか、それらの納めた接合点の集合は建築や空間の質を決定する。物と物の接合部分は建築の節目となり、空間に個性を生む。
そして、地域をつなぐ拠点としての節目へ
特徴ある様々な地域がつながり、広域経済文化圏を形成している。その文化・経済の交流拠点として建築は機能する。そこに生まれる空間は、そこでしか成立し得ない個性と魅力を発揮する、様々な人や文化を呼び込み、つなぐ、節目でありたい。
様々なつなぎ方、節目のようなもの
だから、「節目のデザイン」
節は幹枝葉の継ぎ目である。
節は私たち木造の文化を持つ日本人には身近な存在である。
物と物のつなぎ方、節目を考えるのは建築の基本である。
基礎、土台、柱、梁。
建築には様々な節目がある。
着工、上棟、竣工。
建築ができる時、人生や地域、歴史の節目になる。
建築ができると、人と人、人と地域、地域と地域が繋がる。
節目は建築にとって象徴的な言葉である。
建築は節目に成り、建築は節目に成る。