「福岡の町」


 信号を待つ隣では賑やかな声に包まれた空間が広がっていた。

 小さな屋台には10も満たない席数で隣同士の距離など気にせず店主を囲むお客さん。家族同僚恋人お一人様。店主はかりんとうのように黒光りする腕で焼きラーメンを素早く炒めスープに麺を絡ませる。それが終わると繊細な指先ででクルクルと肉やら魚介類の刺さった串を操っていた。その横にはタイミングを逃さないよう皿洗いをする無駄にガタイのいい男が一人、いや2人?カウンター側にもう一人いるが目の前の客と友達のように話す姿は仕事をサボっているようにも見えた。それもなんだか許せるのが不思議だ。そんな光景をまじまじと見守る若者もいれば会話ついでに流し見する50代くらいのおじさんとおばさん。ここに座るみんなに共通するのは自分の注文した一品を待つみんなの高揚した顔だった。

 同じ会話をしているわけじゃないのに、なぜかそこに座れば家族のような雰囲気が漂う。

 おでん、焼き鳥、絶対美味しいラーメン。常連だろうか「大将、あれちょうだい」と注文した名の無い料理が気になった。座るだけではここの全てを知ることはできないらしい。

 ああ、なんかいいな。

 私は信号を待つ。
見上げればもくもく漂う煙と、ガヤガヤな雑談が行き先を迷わせる。

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