ブックガイド(116)「邪馬台」蓮丈那智フィールドノートⅣ
北森鴻氏の未完の長編「鏡連殺」を、彼の構想ノートに基づいて浅野里沙子氏が完結させた作品である。そして、私の一番好きな蓮丈那智シリーズの長編でもある。
読み終えて大きな満足感に浸っている。よくぞ完成させてくれた。浅野氏と新潮社には感謝したい。
廃村から始まる謎
村に降りかかる殺戮の予感を思わせるプロローグで一気に引き込まれる。その村とは、鳥取県と島根県の県境にあった阿久仁村。明治の初期に地図から消えている。その村に残る「阿久仁村遺聞」という古書が雅蘭堂・越名集治の手で蓮丈那智の研究室に持ち込まれるところから物語は始まる。折しも、そのとき蓮丈は民俗学の手法で邪馬台国に迫っていた。
近年、youtubeの番組で、廃墟・廃村を探索する動画が静かなブームになっている。そのブームを先取りするような作品。
北森ワールドの総集編
この雅蘭堂をはじめとして、冬狐堂・宇佐美陶子シリーズや香菜里屋シリーズのおなじみのキャラクター達が登場する。北森鴻の作品世界のオールスター登場でうれしくなる。
この物語の謎そのものが冬狐堂シリーズの「狐闇」の続編的な位置づけでもある。
今こそ映像化を
北森鴻の作品は映像化が少ない。それだからこそ、魅力あるキャラ達にぴったりの俳優をあてがい、マーベル・ユニバースのような映像化をすべきだろうなあと感じる。特に、蓮丈那智シリーズは、優れた短編が多い。連作シリーズとして、3シーズンほど作れると思う。
「邪馬台」蓮丈那智フィールドノートⅣ