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私が教師をやめるまで#11~#12
【第11話】ADHDの生徒との関わり:現実はものすごく残酷だった 前編
担任しているクラスにはADHDの生徒もいた。
彼は授業中も落ち着きがない時もあれば、疲れ切ったように机に突っ伏しているときもある。また自律神経の問題もあり、朝がとても弱い。
忘れ物や遅刻も多くて、時間や約束を守ることもできなかった。
課題ももちろん出すことはない。
しかしながら、テストの点数は学年で真ん中程度であった。
となると、彼は周囲の先生から「さぼっている」と言われるようになる。
彼に対して、態度を注意しても反省しないし、改善しようともしません。
というかそもそも、彼自身が努力しても治らないという現状もある。
彼にとっては「普通」に過ごしているだけなのだ。
彼に対して、周りの教員はイライラや怒りを感じていた。
彼の保護者や同僚教員に相談してみたが、彼らは彼の問題行動を理解しようとしなかったり、保護者に関してお手上げ状態だった。
彼らはADHDを「甘えだ」「怠けている」「やる気がない」というように否定的に捉えています 。
「先生が上手く指導すれば良くなるだろう」「子供だから仕方ないだろう」「自分で何とかするしかないだろう」と言って責任転嫁します。
彼を指導することにおいて、私はまた周囲から孤立してしまいました。
「こんな子どもに付き合っていられない」というのが周囲の正直な感想だったに違いない。
そう思わずにはいられないほどに、彼への周囲の対応は冷たかった
【第12話】ADHDの生徒との関わり:現実はものすごく残酷だった 後編
彼は徐々に彼は学校に来られなくなっていった。
出席日数も、すべてギリギリの状態で数日休めば留年が確定してしまうような状況まできていた。
そしてテストを受ける気力もなく、課題も提出できないため、彼は何度も再考査を受け、課題のプリントをいつも職員室前でこなしていた。
保護者面談を繰り返し、同僚教員の中でも理解がある人に相談したが、学校全体として彼の存在を受けいれることは難しく、支援することができなかった。
次第に学校側は私に定時制の学校などの情報を集めるように勧めてくる。
そう、学校は彼に退学を勧める方向でいたのだ。
ただし、これは当然だといえばそうだ。
普通科の学校において、課題も出せず、遅刻が頻繁につづき、授業の出席日数も足りないとなると、学校側としては「退学」を勧告をしなければならない。
彼が進学できるように何かできないかと考え、個別に授業を行ったり、家庭訪問をしたりと、あらゆる手段を講じた。
しかし、彼が学校に来ることはますます少なくなり、心配は日に日に募っていった。
私は学校側の対応や、周囲の教師の対応に失望した。自分が何のために教師をしているのかわからなった。
しかしながら、今の学校では「その対応」が普通なのだ。
「彼」のような生徒が理解されるのは、まだまだ遠い未来の話なのかもしれない。