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向山こども園の挑戦:NPO設立と新しい保育環境の創造

未来の保育環境を考えたとき、教育と異業種を結びつけることは大きな可能性を秘めています。
向山こども園では、これまでも、カフェやNPO、放課後デイサービスや様々な教室との連携をするなど、異業種との協力関係を深めてきました。
そして今年、障害のある方々に仕事の機会を提供しながら、保育環境の課題解決を目指すNPO設立のプロジェクトが進行中です。
この取り組みは、子どもたちの健やかな成長を支えつつ、地域全体に新たな価値をもたらす挑戦でもあり、私自身、とてもワクワクしています。

布おむつの意義と課題

向山こども園では、子どもたち一人ひとりの排泄リズムを尊重し、保育者との密な関わりを持つために布おむつを採用しています。
布おむつを使うことで、子ども自身の排泄リズムに大人が寄り添い、一対一の関わりを深めることがで切るため、特に集団保育の中では欠かせない保育アイテムの一つだと思っています。
しかし、値上がりし続けるクリーニング費用の増加が保護者にとって大きな負担となっている現状があり、布おむつの使用を続けるためには、クリーニング費用をいかに抑えるかが急務だと考えています。

クリーニング業務内製化への道

この課題に対して、向山こども園では、NPOがクリーニング業務を担う仕組みを構築する計画を進めています。
これにより、費用を抑えながら障害を持つ方々の雇用機会を創出することが可能になります。
しかし、このプロジェクト、一筋縄にはいきません。
洗濯機を置いて洗えばいいという単純なものではなく、指定洗濯物であるおむつは、衛生面を担保するために専用設備が必要で、クリーニング師という国家資格を持った有資格者を置かなければならないなど、かなりハードルが高い仕組みです。
そのため、現在はクリーニング業者の助言を受けながら、施設設置や機材導入の準備を進めています。

園庭の泥対策と靴のサブスクリプションサービス

もちろん、NPOの利用者の方々にとっても、生活の一部となる職場を目指しているので、もう少しコンスタントに作業量が必要になります。
そこで、いろいろなサービスを構築できないかを模索しているのですが、その中の一つが靴のサブスクサービスです。

どろどろの園庭、どろどろの靴

向山こども園の園庭は粘土質の土壌で、雨や雪が降るとすぐにぬかるむという特徴があります。
子どもたちにとっては泥遊びが楽しい経験となり、地形も作りやすいという利点がある一方、保護者にとっては泥だらけの靴の洗浄が大きな負担です。特にマンション住まいの家庭では、泥を払う場所や洗浄場所に制約があり、問題解決の必要性が高まっています。
向山の保護者の方は、子どもが泥だらけで保護者の方に会ったときに「いっぱい遊んできたね!」「たのしかったね!」と声をかけてくださる方が多く、本当に頭が下がる思いですが、負担であることは変わりないので、何とか解決できないかと悩んでいます。

そのため、専用の靴を洗うスペースを作れないか? 子どもたちが歩くだけで靴がきれいになるような道ができないか? など、これまで業者の方にも聞きながら模索してきましたが、どれも現実的ではなく解決に至っていませんでした。

検討しているサービスの概要

こうした課題に応えるために、靴のサブスクリプションサービスを検討し始めています。
このサービスでは、登園時に園専用の靴に履き替え、思い切り遊んだ後は、帰りに、登園時にはいてきたきれいな靴で帰宅できる仕組みです。
靴ステーションがあって履き替えられたらいいのではないかと考えています。
これにより、保護者の負担を軽減しながら、子どもたちが泥遊びを思い切り楽しめる環境が整います。

靴を洗うという業務は、比較的安全に行える可能性があるため、NPOに依頼もしやすいのではと思っています。
しかし、大量の靴が必要になるなど、サービスの導入にあたっては、コスト面での課題があるため、地域や保護者の皆様に、サイズアウトした靴を提供いただくなどの協力をいただけないかなど、実現に向けて具体的な検討を進めています。

衣服サブスクリプションの提案と子育て支援の新たな形

サービス考案の背景

もう一つのサービスは、衣服のサブスクサービスです。

子どもが泥だらけになって遊ぶことを楽しむ一方で、保護者にとってその後の洗濯や掃除の負担が重くなる現実があります。
特に共働き家庭や単身家庭、育児を一人で担う家庭では、日常の家事の負担が子どもとの関わりに影響を及ぼすこともあります。
うちも、二人目が生まれるときに、思い切ってガス乾燥機を導入しましたが、これがなかったら、とてもじゃないですが、洗濯物の山をさばけるとは思えません。

また、衣類はすぐにサイズアウトするため、意外とお金がかかります。
うちの場合は、祖父母が楽しみの一つとして、セカンドストリートなどで洋服をよく買ってくださるので、本当に助かっているのですが、自分たちでシーズンごとに買おうとするとなかなかの経済的な負担があります。
こうした背景から、衣服を園で用意するサブスクリプションサービスがあったら…と思うようになりました。

家事と育児を通じた成長の機会

もちろん、家事を子どもと一緒に行うことは、子どもの成長において大切な教育の一環であると考えています。
子どもと一緒に洗濯物を畳んだり、料理の準備をしたりする中で、生活スキルや家族の一員としての役割を自然と学ぶことができるからです。
こうした活動を通じて、親子の絆が深まり、子ども自身も自己肯定感を育むことができるのではないかと思います。

しかし、この考え方が実践できるのは、私自身が恵まれた環境にいるからだとも感じています。
日常的に妻が育児を積極的に引き受けてくれていて、家事を分担し合える状況があり、祖父母が近くに住んでいてサポートを受けられることなど、子育てを支える条件が整っていることが大きいです。
こうした条件がない家庭では、理想として考えても実現が難しい場合も多いのは、火を見るよりも明らかです。

衣服サブスクリプションサービスの概要

平日には、NPOが用意した衣服をすべて使用し、それらを着替え袋の中にセットします。また、自宅からは「サブスクウエアー」を着て登園できるように、次の日に着る服の貸し出しも行います。
子どもたちは保育日にはサブスクウエアーを着用し、持参するのは下着の着替えのみです。仮に着替えが必要になっても、園内でサブスクウエアーを用意しているため、自宅から持参する必要はありません。

我が家では、祖母に買ってもらった(私なら購入しない)フリル付きのドレスは休日に着ることにしています。
このように、「普段泥だらけにしても良い服」と「休日などに着る特別な服」を分けることで、家庭で楽しみながら購入する服と、実用的な服を分けることができます。
こうすることで、購入費用と手間を抑え家庭の大切な衣服が傷む心配を減らせるのが大きなメリットになるのではないかと期待しています。

家事外注の是非と多様な家庭環境への配慮

「家事を外注化する」「負担を減らすためにサービスを使う」という意見には批判的な意見もあります。
家事や育児を自ら行うことで得られる学びや喜びは確かに大きなものです。しかし、家事負担が過剰になり、大人の疲労や時間の制約によって子どもとの触れ合いが減る場合、それは家庭全体の幸福度に悪影響を及ぼしかねません。

そのため、家庭の状況やライフスタイルに応じて、多様な選択肢があることが大切だと考えます。
たとえば、衣服サブスクリプションサービスは、平日の家事負担を軽減し、その分のエネルギーや時間を子どもとの関わりに使いたい家庭にとっては大きな助けとなると期待しています。
一方で、自宅で子どもと一緒に家事を楽しみたい家庭にとっては、こうしたサービスを利用しない選択が最適である場合もあります。

多様な選択を尊重する子育て環境を目指して

大切なのは、どの家庭の選択も尊重される環境を整えることだと私は考えています。
家庭ごとに異なる条件や価値観があり、それに合わせた柔軟な支援が求められます。

向山こども園とNPOで検討されている衣服サブスクリプションサービスは、そうした多様なニーズに応える可能性を持つ取り組みです。
このような選択肢を提供することで、忙しい家庭やサポートが限られる家庭も含め、子どもと過ごす時間をより豊かなものにすることができるのではないかと期待しています。

多様な価値観を尊重する保育環境を目指して

向山こども園が進めるNPO設立や新しいサービスの数々は、教育と福祉の垣根を超え、保護者、地域、障害を持つ方々の間で多様な価値観を尊重する社会づくりを目指しています。
どの家庭にも、それぞれの事情や優先順位があり、その違いを理解し、柔軟に対応できる環境を整えることが重要です。

すべての子どもが自由に遊び、豊かに成長できる未来をつくるために、私たち保育者や地域全体が協力し合うことが求められています。向山こども園の挑戦が、この新しい時代の保育モデルを示す一歩となることを願っています。

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