エピソードの語り方
保育者の仕事は、ただ子どもと関わるだけでなく、保育を「発信する」「説明する」役割もあります。その際、どのようにして保育の魅力を伝えるかは、重要なスキルの一つです。
今回は、保育の現場でのエピソードを使った効果的な発信方法についてお話しします。
エピソードで保育を語る重要性
保育の現場では、子どもの日常の遊びや生活を取り上げ、その中から成長の瞬間を見つけ出し、分かりやすく伝えることが求められます。
その際、できたorできない などの評価ではなく、出来事や子どもの気持ちや変化を交えたエピソードを通じて伝えることで、聞き手に子どもの成長を感じてもらいやすくなります。
私が憧れていた前の職場の主任のように、保育の話を楽しく魅力的に語れる保育者は、子どもの言動や出来事を上手に描写し、時にはユーモアを交えて話す技術を持っています。
こうした保育者の話に触れると、私も「こんな風に話せるようになりたい」と思わずにはいられませんが、実際に子どものことを面白く話すのはなかなか難しいものです。
エピソードを語る2つの方法
今日は、エピソードを語る際に役立つ2つの話し方を紹介します。
一つ目は「物事を深く話す」、二つ目は「時系列で比較して話す」です。
1. 物事を深く話す
この方法は、子どもの姿や行動が印象的だった瞬間を切り取って、細かく描写する話し方です。
例えば、子どもの行動に感動したり、面白いと思った瞬間があれば、その場面を具体的に思い出しながら「誰が何をどのようにしたのか」を詳細に語ります。
また、その時の自分の感情も加えることで、聞き手がその場面に感情移入しやすくなります。
もちろん、その場面をビデオや写真に収めることができれば一番良いですが、タイミングよく撮影できることは少ないでしょう。
そこで、自分の観察力を活かして、できるだけリアルに場面を描写することがポイントです。会話なんかも入ると、最高に分かりやすくなります。
聞き手が場面を想像し、同じような気持ちになることで、子どもの行動や成長をしっかり伝えることができます。
2. 時系列で比較して話す
もう一つの方法は、子どもの成長を時系列で比較して話すことです。
例えば、4月には友達のものを取ってしまっていた子が、10月になると「貸して」と言えるようになった、という変化を伝えることで、その子の成長を分かりやすく表現できます。
この時に注意したいのは、「できる・できない」だけに焦点を当てないことです。「前はできなかったことが今はできます」というのは、わかりやすいのですが、それでは、優劣にしかならず、良い悪いの評価になってしまいます。
子どもの成長を語るとき、必ずしも大人にとって津語の良い方向にだけ育つわけではありませんが、これも大切なことです。(詳細は下の記事をご覧ください)
時系列の比較で話すときには、子どもの気持ちや思いにフォーカスすることで、その成長の背景を理解してもらいやすくなります。
例えば、「最初は自分のやりたいことを探していて、戸惑いもある生活の中で人のものを無言でとってしまうこともありましたが、今は友達と一緒に遊ぶ楽しさを知り、仲良く遊ぶための知恵として、「貸して」という言葉を使うようになった」といった風に、その子がどのように成長しているのかを語ることで、聞き手により深い理解を促せます。
表現に工夫を加える
もちろん、どちらの方法も淡々と話すだけでは物足りなく感じられるかもしれません。話す際の表情や、文章の構成にも工夫が必要です。
しかし、エピソードを深掘りするか、時系列で成長を比較するか、どちらかの方法を取り入れることで、ただ出来事を羅列するのではなく、子どもの成長や保育の素晴らしさを伝えやすくなると思います。
私と同じように、こどもの面白さはわかっているのに言語化が難しくてもやもやしている保育者の方々にとって、少しでもヒントになれば幸いです。